サイズ違い 「シカマル、好きだ」 「さんきゅ」 「愛してる」 「おー」 「好きだ」 「…うん」 「愛してる」 「…しつけーよ聞こえてるよ」 オレの家にツカツカと上がりこんできたと思ったら、ベッドに寝転んで本を読んだるオレの前に棒立ちして、言った。 「愛してる」 「だからしつけーよ」 真剣な顔。でもオレの本も今いいところ。オレの予想するに、この次のページからどんでん返しがあるのだ。今いいところなのに、耳元で五月蠅い。 本から目を放すことはせずに、さっきからなんか変なキバに尋ねた。 「で、何しにきたんだよ」 「シカマルは」 「うん」 「おれを愛してますか」 「バカじゃね」 そんなの今更じゃねーか、どしたんだよ急に。そう言ってやるとキバは口を噤んで顔をしかめた。 「なんだよ」 「いつもおればっか言ってんじゃん」 「なにを」 「好き、愛してる」 「別に頼んでねーだろ」 「そーだけど…」 パタン、と閉じたのは勿論部屋の戸ではなく本だ。しゅんと縮こまったキバを見てすこしだけ話をしてやろうと思う。 「あのさぁ…」 「…うん」 「愛してるって、三十回」 「へ?」 「言って、三十回」 「なんで?」 「オレの愛してるはお前の30倍だから」 「げ……」 「冗談だけど」 だって、好きだ愛してるだなんてそんな簡単に使う言葉じゃねーじゃん。そんな軽々しい言葉じゃねーだろ、分かってる? そういくら言葉を並べてもそれがオレの本心じゃないから、光らない。キバが納得いかないのも分かる。だから、仕方なくだ、仕方なく。 息切れするキバを前に、別に一気じゃなくてもいいのに、そう言ってやると泪目のキバ。 こんなクサいことは言ったことがないので、口に出さずとも照れる。言えない気持ちは、永久に心の中でリピート。 仕方ねぇ、じっくり味わえ。本当はお前の30倍どころか、100倍だよ、100倍の愛の結晶だよ。 「愛してるよ」 * |