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逆転裁判&検事 小説
差さない光(成歩堂・独白)




逆転裁判4が主で
他シリーズより

――――――――――






………来たか…


店内に流れる稚拙な
リズムがピタリと止まる
心做しか客が
安堵した気がする

僕だって弾きたくて
弾いてるんじゃない
(本業はどっちかって
いうとアレだしね)
店長には何度か
やんわりとピアニストは
止めたいと言っている
のだがアレを表立って
職業にする訳にも
いかなく

約一ヶ月前の自分なら
「異議有り!!」と
力強く叫ぶであろう
"弾けないピアニスト"
の肩書きを背負ってる



…と話がズレたが
僕はゆっくりと鍵盤に
蓋を被せながら
チラリと出入口をみやる

……うん
見なきゃ良かった

直ぐに視線は
手元に落ちる


仁王立ちをして
出入口で僕を
射殺すように見る男は
視線は勿論、オーラも
凄まじい……
凄まじい怒りのオーラ

そりゃ反らしたくもなる

でも目があって
しまったからには
話はしない訳にも
いかない訳で


ツカツカと靴音を
鳴らしながらピアノに
近寄ると僕の横に立ち

そのオーラを微塵も
崩さないまま見下ろし

「…久しぶりだな
成歩堂 龍一」

嫌みたっぷりにフルネームで
僕を呼んだ
御剣伶持のその顔は
恐ろしいほど
無表情だった













現役弁護士…ましてや
法曹界で中々有名だった
成歩堂龍一が証拠を捏造
なんて事件は
各方面に轟く


先ず事件翌日辺りに
事実確認のために
やって来た
イトノコ刑事に

「失望したッスゥゥゥ!!」

という言葉と共に
何故かそーめんを
投げ付けられた
…相変わらず給料は
雀の涙の様だ

次に僕が弁護した
元依頼人達から電話や
事務所への直接訪問
それぞれ事実と虚実が
混じって話されたため
誤解を解くのに必死
(みぬきちゃんが
居たときなど更にカオス)

…でも各々皆心配して
くれているようで
正直心は暖かくなった


意外な人としては
狩魔検事…勿論娘の方
事務所に突然現れては
鞭を散々振るわれた
(みぬきちゃんが
"えすえむ"という言葉を
覚えてしまった)
…表情は何処と無く
泣きそうだったのを
覚えている


………因みに
真宵ちゃん達はきっと
この騒動を知らない

世と隔絶され修行に
励んでいるから
僕的には好都合
知らせるつもりも
知る必要もないから


それは皆にも
この目の前の男にも
当てはまる事なんだけど





「…本当、久しぶり
イトノコ刑事から
二年は帰ってこないって
聞いてたんだけど」

その表情に一瞬言葉が
詰まるものの
直ぐに口角を上げて
取り繕うと僕と
話すときの特別席に
彼を促す

彼が座るのを見ると
僕はピアノから体を離して
御剣に向き直る

「…勿論その予定だった
日本の法曹界が
揺れるまではな」


「そんな回りくどい
言い方しなくたって
いいだろ
僕のバッジがなくなった
それだけだよ」

僕が話を避けると
思っていたのか
その言葉に驚き
目を見開く

「……」

「お前の事だから
全部把握して
いるんだろう?
それが真実だ
何も話すことはないよ」


……そう 話すことは
何もないんだ

事件の闇の真ん中に
いる僕だって何一つ
分かっていない

この闇は深い
あくまで関係無い
君達に関わらせたくない


大事な人達だからこそ



「っ…成歩堂…
この事件には未だ
いくつか謎がある
お前がそれに気づいて
ないはずはない」

「事件は容疑者行方不明で
止まっている
疑問があるのは当然だ」

「違う!疑問ではなく謎だ
先ず…」

「事件について
答える気はないよ」

「何…!?」


彼も法廷で真実を
突き詰める戦士

僕より頭がキレる
御剣ならばこの事件の
闇を分かっている

これからこの闇
立ち向かおうとしている
僕としては心強い仲間に
なるかもしれない

……でも、それでも


「放っといてくれよ
御剣
僕はもう弁護士じゃない
関わらないでくれ」

「…っ……」


戦士の前に君は
僕の友人だから





((じくりじくりと痛む胸
は抱え込むべきもの))




end







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