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8.大虚×希望




 「っ…」

 少々きつめに捕まれ
 息苦しさを感じるものの
 辛い程ではない

 もの凄い勢いで
 外に出され風圧で
 数分意識をとばしていた
 織姫は足に違和感を覚え
 目を開いた

 まず驚いたのは高さ
 校舎の屋上から二倍
 近い高さに居て少し
 クラリと目眩をしそうになる

 そして次に
 足に視線を落とすと…

 「…へ?高嶺…君?」

 必死の形相で私の足に
 捕まっている彼がいた














 「んで高嶺があんなとこ
 居んだよ!?」

 同じく上空にて
 織姫を拐った大虚を
 倒そうと来た一護達は
 石田に詰め寄っていた

 「知らないよ!
 気づいたら
 井上さんのとこに!」

 「あの一瞬で咄嗟に
 足に捕まるとは…」

 ギャーギャー喚く2人に対し
 ルキアは呆れのため息を
 つくと2人の頭を叩いた

 「馬鹿者!!
 言い争っている場合
 ではない!
 一刻も早く2人を
 助けるぞ!」

 ルキアが急ぐ理由は
 別にもあった

 高嶺の存在に気づく前
 繋ぎっぱなしにしていた
 伝令神機から未だノイズ
 混じりだが短い叫び声が
 聞こえたのだ
 それと血飛沫の音…

 日番谷達に危険が
 迫ってる
 もしかしたら…もう…
 そう考えると恐ろしくなり
 いてもたっても
 いられない

 叩かれた2人は
 そこを擦りながら
 そうだな、と返事を
 返すように各々の武器
 を構える

 一時視線を交す
 それだけで3人には
 言葉はいらない

 石田が矢を放ったと
 同時に一護、ルキアは
 斬りかかった














 「危ないよ高嶺君!!
 お願いだから降りっ…
 ちゃ駄目だ!!
 とにかく大人しくっ!
 ねっ!?ねっ!?」

 「うぉららぁああ!!」

 織姫の願いも虚しく
 高嶺は足からよじ登り
 手首付近に到達していた

 「井上さん静かに!
 化け物にバレます!」

 それどころか
 冷静に辺りを見回して
 次どうするかを
 考えている高嶺に
 戸惑うばかり


 一体何だってんだ…

 見た目では冷静に
 装っている高嶺だが
 内心はとてつもなく
 動揺していた

 突如現れた巨大な手に
 井上さんが捕らえられた
 その時はほぼ無意識で
 助けなきゃと思い
 咄嗟に足を掴んだ

 何故助けようかと
 思ったのかは
 わからない
 けど不安だった高校生活
 に光が見えたのは
 彼女を始めとする
 クラスメイトのおかげ

 その人が危険に
 さらされている
 助ける理由はそれだけで
 十分だった

 「オ゙ォォォォオオ…!!」

 突然つんざくような
 雄叫びと爆発音が鳴ると
 グラリと大虚が傾いた
 即ち手も傾く

 「うあぁああ!?」

 「高嶺くっ…きゃあ!!」

 手首の上に立っていた
 高嶺はバランスを崩し
 落下しそうになる
 織姫も手から抜け出した
 のはいいが同じく落下

 「っ、井上さん!!」

 王を決める戦いの
 前はからきし
 だった身体能力は
 強くなり未だに人並み
 外れて動ける高嶺

 体が一瞬浮いた隙に
 大虚の親指を掴み
 井上の手を掴んだ

 「!さ、三点結盾!!」

 今の内、と織姫は
 ヘアピンに触れ言霊を叫ぶ
 するとオレンジの膜が
 2人の下に出現

 「!? 攻撃!?」

 織姫を庇おうと
 自分に引き寄せる
 高嶺だったが

 「違うよ!離して
 大丈夫だから!」

 人を安心させるような
 笑みを浮かべる織姫に
 目を見開くが一刻の
 猶予もないため織姫を
 信じて目を瞑った

 一瞬 無重力を感じるが
 ドスンと何かに体が
 落ちた音がし恐る恐る
 目を開けると自分は
 先ほどのオレンジの膜に
 乗ってゆっくりと
 降下していた

 「こ、これは…」

 「私の能力だよ
 難しくて説明は
 詳しく出来ないけど
 盾を張ったりこうやって
 落ちないようにしたり
 治癒をしたり出来るの」

 「へぇ…」

 まさか井上さんに
 特殊能力があるとは…
 まるでティオのセウシル
 みたいだな

 内心感心しながら
 盾に触れると
 いつの間にか何処かの
 ビルの屋上に着いた

 盾が消え無事着地すると
 化物の断末魔の叫びが
 大きく響いた

 高嶺が視線を移すと
 先程まで居た化物は
 真っ二つに斬られ
 空に溶けるように
 消滅するところだった

 「…黒崎さん?」

 その光景を呆然と
 見ているとこちらに
 黒い装束を纏った
 一護が降りてきた
 後ろには同じく
 黒いルキアと対照的に
 白い装束の石田が居る


 倒したのは黒崎達…?
 益々彼らの謎が深まり
 頭を抱えたくなる清麿
 だがそれは自身の頭の
 鈍痛により考えは
 阻まれた

 「この馬鹿ッ!!
 何勝手に無茶してんだ!」

 「痛ッ!!…えっ?」

 どうやら痛みの原因は
 一護の拳骨らしい
 現に一護の拳からは
 煙が揺らめいている

 「そうだ!生身の人間が
 あの高さから落ちたら
 どうなるかわかって
 いるであろう!?」

 「井上さんが三点結盾
 しなかったら
 どうなってたか…」

 続いてルキアと石田にも
 怒鳴られ数秒固まって
 いたが自分のした事に
 気付き苦笑いを浮かべる
 織姫はまぁまぁと
 三人を宥めている

 「わ、悪かった…
 でもそんなに
 怒らなくても…」

 「ふざけんな!
 大事なクラスメイトが
 危ない時に助けない奴が
 いるかっ!!」

 一護の言葉にハッとした
 純粋に俺を心配して
 出た言葉が信頼した仲間
 の声と重なった

 『…忘れないで…』

 『私達も一人
 じゃないってことを!!』

 『仲間という希望が
 あることを!!』


 久しぶりに聞いた
 暖かみのある言葉は
 心に深く染みた


 「…有り難う、黒崎」



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あきゅろす。
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