[携帯モード] [URL送信]

×小説
2.理不尽×転校






 「よっ!天才児の
 高嶺君♪」

 「その呼び方は
 止めろよ…」

 新入生テストから
 数日経っても
 高嶺人気は衰えなかった

 当の本人も
 苦笑いを浮かべているが
 嫌な気はせず
 むしろ有意義な
 高校生活が送れて
 入学当初の不安は
 微塵もなくなっていた



 ある日の朝
 遅れてきた
 担任の男子教諭が
 慌てた様子で

 「今日のLHRは
 自習!各自教室からは
 出ないように!」

 と言い捨て足早に
 出ていってしまった

 教室内は疑問に
 つつまれるがやがて
 変わらぬ喧騒に
 かわっていった

 清麿も不思議に思ったが
 気にする必要ないだろ
 と思い隣の男子と
 談笑していた

 「でさぁ…
 アイツったら…」

 「ちょっと!!!
 入れなさいよ!」

 「こ、困ります!」

 男子の声を遮るように
 廊下から女性の甲高い
 声が聞こえてきた

 担任の焦る声も聞こえ
 どうやら揉めている様だ

 クラスメイトが注目する中
 突如扉が乱暴に開けられ
 少々太り気味な女性が
 ツカツカと入ってきた

 「高嶺!!
 高嶺清麿って言う子
 いるわよね!?」

 ヒステリック気味に
 叫ばれた自分の名前に
 ビクリと反応する清麿

 ―…え?
 何で俺の名前…?
 つーか誰?

 動揺しつつ呼ばれた
 からには返事を
 しなければと思い
 静まり返った教室で
 ただ1人立ち上がり

 「高嶺は…俺ですけど…」

 と遠慮気味に手をあげた

 すると女性は
 憤怒の表情で高嶺と
 キスするんじゃないかと
 思うぐらい距離をつめ

 「貴方ね!
 真二に手を出したって
 言う暴力男子は!!」

 「…は?」

 ポカンとし状況が
 全く掴めないまま
 女性の顔を凝視する

 真二って…
 確か高松の下の名前…

 頭の片隅でそう
 思いながらも
 全く理解は出来ない

 数秒遅れて担任が
 入ってきて女性を
 落ち着かせながら
 退室を促した

 「高嶺、ちょっと来い
 皆は自習続けてろ!」

 「…はい」

 担任の声に
 ボーッとしてた頭を
 覚醒させ教室を出ていく


 ―…背中に非難の
 視線を浴びながら

















 「…高松さん
 落ち着いて話して
 いただけますか?」

 場所は校長室
 扉付近に担任と教頭
 高嶺の隣には校長
 向かい側のソファーには
 高松の母と顔を赤く
 腫らした
 高松の姿があった

 「これが落ち着いて
 いられるもんですかっ!
 うちの真二に暴力を
 振るったんですよ!?」

 「な…」

 俺は思わず絶句
 校長室までに移動する間
 冷静になった頭で
 状況を整理した

 どうやら今日休みだった
 高松の怪我は
 俺の暴力だと
 思われてるらしい

 濡れ衣にも程がある
 否定するのも
 馬鹿馬鹿しいぐらい

 軽くため息をつき
 言葉を吐こうとした瞬間

 「本っ当に!
 申し訳ありません
 でした!!」

 「ッ!?」

 隣にいた校長に
 頭を捕まれ思いっきり
 下げられてしまった

 「まだ若気の至りで!
 高嶺君も軽い遊び程度
 だったと思います!!
 何卒!何卒
 許してやってください!」

 ペラペラと紡がれる
 謝罪の言葉に
 呆気にとられるが
 謝るって事は…

 「ちょ、ちょっと
 待ってください!
 俺は高松に暴力なんて
 振るっていません!!」

 「まぁ!
 貴方、自分の非を
 認めないつもりなの!?
 どういう教育されてる
 のかしら!?」

 「非も何も
 暴力を振るっていません
 まず振るう理由が
 ありませんし
 証拠はあるんですか?」

 ―その時の俺は
 まだ動揺していた様だ
 初歩的な事に
 気づかなかった

 何故、俺に疑いが
 かかったのか…

 それは"被害者"が
 俺の名前を
 言ったからだと―


 「…証拠?
 …そんなのは
 必要ないだろ
 …俺を殴ったのは
 高嶺!お前何だからな!」

 「!?」

 愕然とする
 高松は…何を
 言ってるんだ?

 「友達だと
 思ってたのに!!
 昨日突然公園に
 呼び出されたと
 思ったら…!
 俺がお前に何を
 したって言うんだよ!?」

 立ち上がり
 涙目になりながら
 訴える高松

 母親の方は優しく
 肩を抱きながら
 高嶺を鋭く睨む

 担任と教頭までもが
 高嶺を睨んでいた

 「……………」

 言葉が出ない

 ―…俺だって
 友達だと思っていた

 ほぼ無意識で
 俺は"答えを出す者"を
 使い自分に問う

 Q.高松が俺を
 犯人に仕立てあげる
 理由は?

 A.中学時代まで
 成績トップだったが
 容易く一位の座を奪わた
 事による嫉妬
 父に怒られた事による
 憎悪が生まれ
 学校を退学させ
 一位の座を奪え返そうと
 画策した結果


 「……そんな事かよ…」

 ポツリと呟いた言葉は
 必死に謝る校長の声に
 かき消された


 友達が出来る嬉しさは
 俺は誰より解っている

 解りあえ支えあえる
 心強い仲間が出来て
 俺は成長出来た

 ガッシュに学んだ
 "友達"と"仲間"は
 俺に光を
 もたらしてくれた

 なのに…どうして
 今、目の前の友達は
 俺を裏切っている?
 不の感情を俺に
 もたらしている?


 ―…友達って何だっけ


 高嶺の闇を
 照らしていた光は
 徐々に掠れていった















 「…高嶺君
 私はとても残念だ
 何故なら君には大いに
 期待していたからだ」

 数時間後
 高松と高松の母親は
 家に帰り入れ違いに
 母さんがやって来た

 「校長先生…!
 何かの間違いです!」

 事情を知った母さんは
 顔を歪め必死に否定する

 「間違い…ねぇ…
 でも本人がやられた
 という話がある限り
 それは
 あり得ないんですよ」

 フゥと息をつき
 至極残念な顔をする校長
 ただ俺には心からの
 残念とは思えなかった

 「…処分は後々
 報告しますが
 退学、でしょうな」

 「そんなッッ…!」

 「その際は家に
 お電話させて頂きます
 それまで高嶺君は
 謹慎と言うことで。
 今日はお帰りください」

 「待ってください!
 清麿は本当に…!」

 「母さん、もういいよ」

 「清麿!?何で!?」

 ソファーにあった鞄をとり
 俺は出入口に向かった
 母さんは俺の肩を掴み
 引き戻そうとしたが
 俺は歩みを止めなかった

 もう無理なのは
 解っている
 "答えを出す者"で
 打開策はとっくに
 考えたが何も出なかった

 どうやら高松の家は
 かなり裕福な家で
 この高校に多額の援助を
 しているらしく
 誰も逆らえるものは
 いないらしい

 本来なら高嶺を庇う
 立場の高校側が
 敵ならば勝目はない

 それに無理矢理
 退学を拒否し居続けても
 高嶺の立場が
 悪くなるばかりだ

 何より高嶺は
 もうこんなところに
 居たくなかった





 「…ガッシュ…ごめん…」

 大きな人間になり
 また会うと誓ったのに

 こんな所で躓いて
 しまうなんて


 唇を噛みしめ
 ただただガッシュへ
 謝罪の言葉を繰り返し
 ながら走っていた








 その後
 高校から連絡が来て
 暴力沙汰が表に出るのは
 嫌なのかただの男子
 高校生が家の事情で
 転校すると言う形に
 なることになった

 転校先を
 母さんが言っていたが
 今の清麿には耳には
 届かなかった




[*前へ][次へ#]

3/13ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!