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BLEACH小説
もう離さない[一織]…シリアス






 ――護りたい…――













 虚園での死闘後
 無事に井上を
 奪還出来た俺達は
 平穏な日々を
 過ごしていた


 日常生活に戻る前に
 井上は俺達に言った

 「…ごめんなさい…」

 きっとまだ井上は
 苦しんでいる

 自分さえいなければ
 こんな事には
 ならなかったと

 その後
 ルキアに謝るなと
 叱られていたが…

 俺は…井上に何か
 出来ないだろうか……





















 「…だからって
 何でこーなんだよ」

 俺はひたすら
 ため息をついていた

 「む?何か
 不満なのか一護」

 軽くギロリとルキアに
 睨まれながらも
 俺は続けた

 「そりゃ俺が井上に
 何かしてやりたいとは
 言ったけどさ…」

 周りを見渡すと
 ワイワイガヤガヤ
 護挺十三隊の皆や
 現世の奴らが勢揃いして
 飲み会を初めていた

 「何で飲み会!?」

 「気分が晴れると
 言ったら皆でワイワイ
 やるのが筋だろう?」

 ごく当たり前の
 ように言うルキアに
 多少、頭が痛くなる








 数日前
 高校に久しぶりに
 通った。
 越さんに出席簿の角で
 叩かれたのは流石に
 痛かった。

 石田やチャドも
 変わりなくて一安心した

 ―でも井上は少し
 変だった。

 いつも通りに
 見えるけど
 いつも以上に外を
 ボーッと眺め
 とても悲しげに
 俯いていた

 そりゃあんな事が
 あった後で直ぐ元気
 なのもおかしいが
 凄く痛々しかった


 前から思っていた
 気持ちも重なり
 その事をルキアに相談
 してみたのだ

 そしたら
 胸を張って任せろ!!と
 言われたので期待して
 いたのだが……



 「ルキアに相談した
 俺がバカだった…」

 「なっ…失礼なっ!!
 井上はあんなに
 楽しそうに
 してるだろっ!!」

 指を指した先には
 乱菊さんと吉良達が
 井上と楽しそうに
 話しているところだ

 「…あれじゃあ
 酒の勢いだろ…」

 またため息まじりに
 呟くと

 「じゃあ貴様が井上を
 励ませっ!!…私には…
 私達にはもうこれぐらい
 しかしてやれん…」

 言葉の最後らへんは
 悔しさが混じっていた

 「ルキア…」

 「それにまだ想い
 伝えてないのだろう?」

 ドキッとした

 「私がわからんとでも
 思ったのか。早く言わん
 と駄目だからな!」

 そう言ってニッと
 笑うルキア

 そのままルキアは
 井上の方へ行き
 俺を指差しつつ会話を
 して戻ってきた

 「二人で買い出しに
 行ってこい!…多少
 のんびりで構わぬ」

 「!……ありがとな
 ルキアっ!」

 そう言って俺は
 駆け出した
















 「よいしょっと…
 いっぱい買ったねぇ!」

 大量のお酒と
 食べ物を持ちながら
 俺と井上は
 月に照らされた夜道を
 歩いていた

 「大丈夫か?俺が全部
 持った方が…」

 「いいのいいの!
 二人で買い出しに
 来たのに黒崎君ばっかり
 持たせちゃ
 駄目だもん!!」

 そう言って笑う
 井上はとても可愛い


 「……あの…さ」

 せっかくルキアが
 作ってくれた時間
 有効に使わなくては

 ん?と小首を傾げ
 聞く井上

 「…大丈夫か?
 …その最近…」

 「…………」

 不味い、と思った
 いきなり単刀直入すぎた

 「あ、いや…無理に
 答えなくて」

 ちょっとアワアワ
 しながら言うと

 「……平気…じゃない
 って言ったら弱いかな?」

 ポツリと呟かれる言葉
 月夜に当たった井上は
 とても弱々しく
 瞳には光が宿って
 なかった


 「…私が…藍染さん達
 の方にいかなければ
 皆は傷つかずにすんだ
 のかな?
 …皆は
 苦しまなかったのかな…」

 「井上……」

 思っていた通り…
 いや予想以上に
 井上は精神的に
 傷ついていた

 「…って何かごめんね?
 暗くなっちゃった!
 こんなの井上織姫
 らしくないっ!!
 ファイトぉ!!」

 パッと笑顔に戻り
 自己暗示をかけるように
 両頬をペチペチと叩いた

 その腕を俺は
 思わず掴んでいた

 「く…黒崎君?」

 吃驚した様子で
 俺を見つめる井上

 「………ごめん」

 「え…?」

 「…俺が護るって
 言ったのに…
 井上を護れなかった…
 それどころか
 辛い思いまでさせて
 井上の嫌いな…戦い
 に巻き込んで…
 …本当……ごめん……」

 素直な気持ちだった

 井上を巻き込み
 たくなかった
 ただ…ただ…
 大切だったから…


 「…私は…荷物なのかな」

 「え…!?」

 思わぬ言葉に吃驚した

 「…虚園に行く前
 浦原さんに言われたの
 足手まとい…って。」

 初めて聞く話に
 俺は目を見開いた


 「私は…皆を護りたい…
 皆と並んで戦いたい…  黒崎君を…助けたい…」

 完全に俯いて
 表情が見えない井上
 でも…
 泣いてるように見えた



 「…俺は…一度も
 井上を足手まとい
 何か一度も思ったこと
 ない」

 バッと顔を上げ
 目を見開く井上

 「十分、井上は
 俺を…俺達を助けて
 くれてるじゃねぇか。
 井上がいなかったら
 今、俺は
 生きてないしな。」

 それに…と続け

 「俺はこう思ってる。
 人は人それぞれの戦い方
 ってのが
 あるんじゃねぇかって。」
 「人…それぞれ…」

 「俺は俺の。
 ルキアはルキアの。
 ソウルソサエティはソウルソサエティの。
 ……井上は井上の。」

 「!!」

 「井上は十分戦って
 くれてる。
 足手まといなんか
 じゃねぇ。」

 俺はまっすぐ
 見つめて言った

 井上の頬には涙が
 伝っていた

 俺はそのまま
 抱き締めた

 井上は少し驚いて
 いたが俺は離さない

 「…ありがとう…
 黒崎君…」


 月だけが
 綺麗に輝きながら
 二人を包んでいた















 (いなくなって気付いた)
 (自分の気持ち)
 (もう二度と離さない)





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あきゅろす。
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