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新たな世界へ
『お待たせしましたぁ!只今からクロノス・オンラインUの世界観を、激戦を勝ち抜いたこの御三方に味わってもらいましょう!』

約一名は激戦とは言い難いと思う。
むしろ余裕だった筈。

司会者に案内され、私と天明、そして綾澤は別室に移ることとなった。
観客達はモニターを通して、私達のプレイを静観することとなる。
私達の側には一人のカメラマンが同行しているから、おそらく彼が撮った映像が流れるのだろう。


別の部屋へのドアを司会者が開け、中に入るよう私達に指示する。
そこには何やら用途の掴めない機械が置かれていて、三脚の椅子とケーブルで繋がれていた。
椅子は歯医者で治療される時に使われるようなシートである。
今は四十五度くらい傾いていると思う。

「皆さん、自分の携帯電話はお持ちですね?」

「あ、はい。というかさっきも走ってる最中に確認されました」

天明が自分の黒い携帯電話を取り出した。

「そこにはめて、君達は此処に座ってもらえるかな?」

思った通り、私達が此処に座るみたいだ。
しかし携帯オンラインゲームで普通はこんなこと出来ない筈だ。
こんな器具は家で用意出来ない。

「携帯だけでは出来ないんですか?」

綾澤がちょうど私の思っていたことを代弁した。

「それが通信機能だけはまだ完全に出来上がっていなくてね、今はこれでやるのが精一杯なんですよ。勿論通信開発も進めてはいるけどね」

「通信させることがそんなにも困難なのか?」

「今のユーザーの人数が多いから、アクセス集中でトラブルが発生しないよう次回作はより補強することになってて少し時間がかかっているんだ」

成程、サーバーが補強されていないから選抜方式を取ったのか。
確かにトラブルが発生しては折角の最新作も期待外れどころか、楽しむ以前の問題だ。


私達はそこに座り、携帯を横に設置された台に置く。
手を離すと携帯の充電する時やメール受信の際に光るランプが付き、画面には『接続中』と表示されていた。

「ではベルトを閉めて、そのままゆっくり椅子に体を預けて下さい」

司会者に促されるままに、私達は腰の辺りにあったベルトを閉める。
完全にシートに体を預けると、上から何やらマスクみたいなモノが降りてきた。
しかし中には電光で『起動』という文字が書かれているのを何とか確認した。


「それでは皆さん、クロノス・オンラインの世界を心身共に感じて下さい」


………心身『共に』?

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あきゅろす。
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