いざ出陣
あれから就職の手続きやらでどたばたしたのもあってか、月日が経つのは早いと思えた。
周りのクラスメイトが国公立や私立の大学に受かっただの、落ちただの、色んな報告も耳にした。
正直私には全く関係ないし、何年後かには行うらしい同窓会にも今のところ行く気は全くなかった。
どのみちもう会う機会はない筈だし、他人事に興味すらなかった。
そんなことよりも今はこれをおもいっきり楽しんでくるべきだ。
「これ、だよね……?」
私の目の前にそびえる三十階くらいはありそうなこのビル。
この建物こそ、イベントの会場となっているWTCインデックスらしい。
たまに車で通りかかったりはしたが、よく見ると結構高いビルである。
「えーと、十八階まで上がらないといけないんだね」
私は一度深呼吸をすると、その建物に足を踏み入れた。
「ご確認しましたところ、ユーザーが一致しましたので会場へご案内致します……久浄季沙様、どうぞこちらへ」
受付らしいカウンターで女性の係員に自分が使っているキャラクターが分かる状態で携帯の提示を求められたので、そこで本人確認を済ませた。
その人に案内され、暫く細長い通路を渡っていく。
高級感を漂わせる赤いカーペットが敷かれてあり、上には洋風のランプがあちらこちらで点灯している。
歩いている間、次回作がどのような作品なのか想像してみた。
次回作に関する情報はあの大晦日以来更新されておらず、最も気になるキャラクターデザインもほとんどが謎のままだった。
まさかだとは思うがクオリティだけ上げといて、名前がまたあの『仲間A』とやら最早ネーミングセンス以前の問題なんてことにはならないと思っているが……もしそうだったらちょっと萎えるな。
「此処が会場でございます」
色々考えていたら、いつの間にか自分が重たそうな両扉の手前にいたことに気付いた。
係員は既に片側の扉をぐいっと引っぱろうとしている。
眩い光がこちらに漏れてきた。
「………………」
人人人、とにかく人だらけ。
一フロアしか使われてない割に、人が沢山いる。
あまりの凄さにぽかんと口が開いて、暫しの間唖然としてしまった。
「クロノス・オンラインUはあと十五分程で始まりますので、時間になりましたらアナウンスでお伝え致します」
そんな私のことなんて気にせず、あっさり係員は踵を返してさっさと扉の奥へと消えていった。
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