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勇者の失踪
「……うぅ…う!?」

知らぬ間に私は机の上でうつ伏せになって寝ていた。
案内してもらった女性にお礼を言って、管理室で電話の件を説明してから部屋に戻ってきた。
電話は私が朝食に出掛ける間に直してくれるらしく、その一件は無事に解決した。
帰ってからはテーブルに置かれていたガイダンスを読んでいたが段々眠くなってきて、少しうつ伏せになろうと思ったらやはり寝込んでしまったようだ。
そしたらいつの間にか夢の中にいたらしい。

……もっとも、ツァーリ国にいること自体も『夢』みたいだが。

夢の中にはあのクロノスがいて、隣には綾澤の姿もあった。
だが、そこに天明の姿はない。


「あの、天明君はいないんですか?」

綾澤がクロノスに訊くと彼は少し目を細めた。
何やら想定外のことが生じたのか、それくらいは彼の表情に陰りがあることに気付けば分かる。

「何度も接触を試みたが、繋がらないのだ。彼の身に何かが起こったのかもしれない」

私は一瞬何を言ってるのか分からなくなった。
一位として存在する筈の『ああああ』がやられたこと自体が衝撃的で、言葉を失った。
それなら尚のこと、私達にも起こる可能性はあったということになる。

「身体能力、使える戦術及び魔法は自ら使った人物と同じにしたつもりであったが……」

綾澤があっ、と何か思い出したような顔をする。

「それは僕の身に実際に起こってますから大丈夫だと思います!」

私はそんなことすら経験してないが、そんな機会はあった。
だが珀と杳さんに助けられて試す暇もなかった。
しかもあの時足がすくんでしまっただなんて、ツァーリ国代表の身としては言いづらい。

「とりあえず我は引き続き、彼の行方を探してみることにする。そして汝達に伝えておきたいことが……!?」

再び彼のホログラムが霞み始めていた。
またか、と舌打ちをしたような仕草を見せて、彼は何とか私達に伝えようとする。

「汝達の……媒介…存在…して……」

途切れた言葉を残して、ホログラムは完全に消え去った。

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