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百万人の大戦
「……疲れた」

時計を見ると、ちょうど深夜零時。
一息ついて、椅子の背にもたれかかった。
手に握られているのは、自分の白い携帯電話。


「『ツァーリ国内一位』……死守したぜっ!!!」


近所迷惑にならない程度に勝利の雄叫びをあげておき、両手の握られた拳を天井に突き上げた。
マンション内なので下手をすれば苦情がやってくる。




今私、久浄季沙(クジョウ キサ)はそれなりに有名で百万人近くが参加している携帯のゲーム『クロノス・オンライン』に没頭する女子高生……いやもうすぐ卒業する十八才だが、めでたくこのゲームの二作目の先行体験者に選ばれたのである。

配信予定日は今から一年後と先が長く、それに対しイベント開催日は約三ヶ月後に迫っている。
体験者の選び方は至って簡単なもので、このゲームは一つの世界に三つの国があり、十二月三十一日の時点で各国で最もレベルの高いユーザーが選ばれるのだ。

但しどういう訳か、未成年部門と成年部門とで大人と子供が区別されている為、総合順位となると相当落ちているのかもしれない。
グロテスクな場面とかが出てくるのだろうか。


それはともかく、今は一月一日。
今頃テレビでは『ハッピーニューイヤー!』だの、花火がぽんぽん上がっているだの、さぞかし盛り上がっているのだろう。
こちらもある意味でテンションは上がっているが、こんなに喜んだのは久々な気がする。

ちなみに大学受験はせずに、卒業したら父の結構有名なセキュリティー会社に勤める気でいるので、勉強の心配は皆無だ。
とりあえずパソコンのソフトを自分で作り上げるくらいまでは出来るので、一応お荷物にならない程度には頑張れると思う。
要するに私の未来は絶望からは一応逃れているということだ。


「他の国のランクも覗いてみようか……げっトリエント国なんか結局『ああああ』が制覇してるんだけど」

何でこんなふざけた名前を付けた割には、レベルが私の二倍近くもあるのだろう。
よく見たら二位以下とは五十近くの差が未だに開いていた……確か朝見た時は百くらいあったよね、うん。

二位の人は頑張ったよ。
違う、頑張ってほしかった。
一位の奴なんて結局レベル上げず終いだし。

貴方が傍観してる間にこっちは必死でしたよこの野郎。


キャラクターを見たところ性別は男っぽいが、『ああああ』ではどんな人物か想像しづらい。
年代すら全く分からないし、一つだけ分かるとしたらこの人は大雑把だということだ。

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あきゅろす。
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