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回想録
「……と言われてもなぁ」

この数時間の間に色々なことが一気に起こって、いまいちまだ状況が理解出来ずにいる。
だが前々からプレイしていたのもあって、一応頭の中では何とか整理が出来た。


とりあえず私はあの変な装置のせいで変な世界に迷い込んで、結局クロノスとやらにツァーリ国へと飛ばされた。
そしたらいつもは携帯の画面で倒している獣人が、私を殺そうと襲ってきた。
だがそれを、私の仲間という設定の棒人間、じゃなくて珀と杳さんっていう人に助けられた、かと思ったら突然女王の元に連行されて、勇者呼ばわりされた。

………これまで振り回されてばかりで、ちっともゲームを楽しんでいないことに気付く。


「そういえば」

もの凄く気になっていたキャラクターの設定についてだ。
二人共細身で背も高く整った顔立ちだし、私の世界に来たらさぞかし人気が鰻昇りになるだろうなと思う。
皆の好みってよく分からないけど。

しかし彼等二人の仲の悪さは予想だにしなかった。
杳さんは完全に毛嫌いしているし、珀も元々なのかまだよく分からないけど、あまり喋ったりしない。
でも杳さんに私の首を掴む手を解くように言われた時は、睨み返していたような覚えがある。
一体私が此処にいなかった頃の沙季はどうやって活動していたんだろう。
分身のような存在なのに、少し尊敬してしまう。



ベッドに寝転がっていると、ふと隣にある電話が目に入った。
折角だし、試しに自分の家の電話番号にかけたらどうなるのかと、半分面白味で通話ボタンを押してみた。

「……………」

受話器から何も音が聞こえない。
通話終了ボタンを押しても何も反応しなかった。

「……???」

こういうのって普通何らかの音や、繋がりませんとか言葉を返してくると思うのだが。

回線の場所を確認し、本体と再接続させてからもう一度通話を試みる。
次は管理室に電話でもしてみることにした。
一応上手く繋がったとしても、下らない質問なら山程あるから適当に訊けばいいだろう。
だが相変わらず、それが反応したような気配もない。

「……ないないないない、そんな馬鹿な」

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