[携帯モード] [URL送信]
氷壁の陰
「……………」

「……………」

珀と杳さんは口を閉ざして全く喋ろうとしない。
女王に謁見してから二人共態度が一変し、私の質問には懇切丁寧に教えてはくれるが、それ以上は何も喋ろうとはせず会話がすぐに途切れる。
城へ向かう時に何で他の仲間達が私達を避けていたのか分かるような気がした。
ちなみに一応杳さんは年上だと思うので念の為に敬語を使おうと考えた。
珀は多分同じくらいの年だからタメでも大丈夫だろう。

「あ、あの……さっき私が勇者だとか女王様が言ってましたけど、あれってどういう意味か分かりますか?」

あの時女王に何で言わなかったんだと後悔した質問をあまり期待せずに聞いてみる。
何よりこの気まずさをどうにかしたい。
こういう雰囲気は苦手で、普段はいつも我慢出来ずに早々と逃げるタイプだ。

しかし杳さんは事情を知っていたらしく、やはり抜けどころなく教えてくれた。

「まずこの国、ツァーリ国は見ての通りの雪国で、その為ほとんどの作物が育たず食糧不足に悩んでいる状態です……まぁこの城は隣国トリエントの秘密組織との交易で沢山ありますけど」

「秘密組織、ですか?」

杳さんは嘆息を漏らしながらも続ける。

「トリエント国とは対立関係にありますからね、そこで国家打倒を狙う秘密組織に武器を支援する代わりに食糧を供給してもらっているんです。敵の敵は味方っていうことですよ」

そういえば一作目で、敵の中にはトリエント国の兵士もたまに出ていたことを思い出す。
食糧危機の問題も一作目で取り上げられていたし、餓死する人が出ることも稀ではないらしい。

しかし秘密組織の存在については初耳だ。
この国って結構危ないことをやっている気がする。


「その為に最近獣人に加え、庶民の反乱も盛んになってきましてね。特に最近はナロードでしたっけ……この組織は他国と秘密取引をしているらしく、私達が知らないような武器を使ってきたりして厄介になっているんですよ」

この辺りも全く知らない。
ただこのナロードとやらが今回のシナリオに深く関与しそうな気がする。

そういえば始めてから数時間経ったと思うが、このゲームは何処で体験終了するんだろう………


「ですから恐らくですけど、貴方がこの国を助けてくれるっていう意味じゃないですかね。正直貴方にそのような力は見受けられませんけど」

「そうなんですか……」

私も同感です、と言いたい。
女王は考え直すべきだ、自分の力で国を安定させるべきだと思わないだろうか。
私は残念ながら別世界からやってきただけで、普通の学生である。
一応ツァーリ国ランク一位のプレイヤーではあるが実際にいるとなると、話は別だ。

[*前へ][次へ#]

14/35ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!