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最悪なご時世
猛吹雪の中、唯一のランプで照らされる細い道を歩くこと一時間ぐらい。
彼等二人の他に別の仲間が十人程いたが、珀という少年ももう一人の青年も私のことを一切話さなかった。
それどころか私の班だけ、やけに他の仲間達から距離を置いてる気がするのは気のせいなのだろうか。

色んなことを考えながらも、これはゲームだからそんなに考える必要はないという結論に辿り着き、これ以上考えるのをやめた。
しかしまた次々と疑問が出てきて頭の中であらゆる考えが浮かぶが、結局はあの結論に戻り、その繰り返しが続いた。


それにしても此処がツァーリ国だなんて俄かに信じられない。
これはむしろ疑似世界と言った方がふさわしい。
寒いとも感じられるし、足がいかに重たいのかも伝わってくる。





「すると彼女が別人のようになっていたということですね?」

そして今、私の目の前には顔を羽毛の扇子で隠した女が玉座に座っていて、青年に事情を聞いている。
豪華な装飾品やドレスを身につけていることからすると、おそらく女王とかではないだろうか。
確か一作目で、この国の王は女性である設定があったような気がする。

城に着いてから真っ先に二人は螺旋状に旋回する階段を上がり、私はとある一室に連れていかれた。
階段の途中で息が上がって立ち止まってしまった私だが、意外にも彼等は数段先で私が再び歩き出すのを待っていてくれていた。
案外実は睨まれていたのかもしれないが。


「はい。女王様は今後、彼女についてどう対処致すべきかと思われますでしょうか」

私はというと、今はゲーム内では仲間だった獣人……いやこの際元棒人間でいい。
その彼の側でつっ立っている状態だった。

ようやく私も少しは冷静になり、何でゲームをしにきてこんな目に遭わなきゃいけないんだと思うと腹が立ってきた。
特にいきなり首を絞めてきたこの少年には、目が覚めたら後ですぐに仲間から外してやろうと思った。
とは言っても、代わりの仲間が補充されるとは限らないから後々しんどくなるかもしれないが。
一作目をやっていた時には一応頼りになる人だったし。


ちなみに青年は女王らしい人に跪いて、丁寧に説明をしている。

「季沙、とやら。私には貴方の事情を聞く権利はあるのかしら?」

青年は頭を垂らしたままで説明していたが、私は彼女を真っ向から見た。
このキャラクターは軍部の人間でこの人に遣えていることになるのだろうが、私『自身』は違う。
だから跪く気も全くなかった。

「権利とかじゃなくて、言っても多分信用しないと思います」

「ならば私が信用すると言えば?」

やはり、そう返してくると思った。
だがこのまま何も言わなければ、話は進まないだろう。

「私はこの人…えーと沙季のプレイヤーで、別世界の人間です」

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あきゅろす。
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