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真っ白い部屋
「此処は……」


視界が開く。
何もない白い世界にいる。

……いや、私一人ではなかった。

「うわ、何処だこりゃ?」

隣に同じように驚く天明が、その向こうには綾澤がぽかんと口を開けて周囲を見回している。


「よくぞ参られた、選ばれた者達よ」


何処からか声が聞こえる。
すると目の前に光が差し、そこから見知らぬ人が現れた。
白い布を纏っていて、エメラルドのような緑色の髪。
現れ方といい、まるで天使みたいだ……髪の色はともかく。

「我はクロノス。この世界を管理するコンピューターだ」

「え、でもどう見ても人なんだけど」

「これは汝達と話す為のホログラムだ。我の本体はまた別のところにある」

そうとは言うが、立体的で実際にいるようにしか見えない。
……というか今この人、いや人ではないが『クロノス』と自ら名乗っている。

「もしかして此処、クロノス・オンラインの世界?」

私が言った途端、他の二人が一斉に私を見てきた。
一般には非常識だが、此処が一体何だと言われたらそれ以外考えられない。

だがクロノスは頷いた。

「そうだ。今お前達の『心』だけがこの世界にやってきたのだ」

「あの……それって幽体離脱ですか?」

綾澤がそれを聞いてか、少し顔色が悪くなった気がする。

「安心しろ、お前達の体は死んでいるわけではない。むしろ夢という感覚の方がしっくり来るだろう」

一体あの会社、どうやってこんなシステムを作り上げたのだろうと思う。

「しかしこの世界とて、身体は必要になる。そこでお前達の媒介を用意しておいた」

「え、それってまさか……」

すると別のホログラムが三つ現れた。
どれも人であるのは確かだがその内の一つ、この少女の姿は見覚えがある。
私に似た黒い色の髪とその長さ、そして服装。

「私が使ってたキャラクター!?」

同時に天明と綾澤も言ったが、それぞれ主語は『俺』と『僕』だ。
それ以外は見事にハモった。

「その通りだ。お前達はこの体で………を……」

その途端、人型のクロノスの形が歪んでいった。

「……時間、切……か……後は…夢…話…」

何を言ってるのか分からないまま、結局ホログラムは消えてしまった。
一体何を伝えたかったのだろう。



次第に何故か、体が重く感じてくる。
私は突然感じた気だるさに負け、瞼を閉じてしまった。

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あきゅろす。
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