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明日よりもちかいところで
*一八万打記念
*学生パロディ





そこでいいだろ、と言ったのに、シキは頑として拒んだ。




「お前は小さいから構わん」
「馬鹿にしてるのか」




そう吐き捨てながらこの狭いベッドの上、本当に二人で寝てしまっているのだから手に負えない。
とはいえこれだけ密着するなら今からでも床に行きたい。
アキラはできるだけ距離を取りたいものの、もう後ろは空間しかなかった。
そして前から伸びてくる腕は、拒むにしては少し慣れすぎていた。
一応抵抗らしい抵抗はするものの、結局おとなしく収まるのだから、変わらないか。

泊まりに行く、と、たったそれだけが携帯電話の留守電に吹き込まれていた時から、嫌な予感はしていた。
案の定食事からなにから大抵密着されて、風呂にまで忍び込まれそうになった。
どうにかこうにかそこは乗り切ったものの、そのあとずっとシキの膝の上である。
これは健全な高校生としていかがなものか。
関係性から言って、健全ではないだろうけれども。




「アンタ、彼女作れば」
「ほう」
「いくらでもいるだろ。男抱いたって柔らかくないぞ」
「お前、女を抱いたことがあるか?」




確かに無い。
しかしそれは口が裂けても言えない。
プライドが許さない。
どうせこの男はあるに違いないのだから、黙っておく。




「なにがいいんだよ」
「お前もそうだろうが」
「違う」




そう言いかえしても、シキは笑うだけだった。
背中に回っていた腕に力が込められて、額と胸部がくっつく。
そこは、どうしてか妙に落ち着く場所だった。
人生の中で、特に記憶がしっかりしてきた時期から、あるいは以前からもそうしてくれた人間がいないアキラには、まだ慣れない行為だったが。




「嫌いだ」
「結構」




なんなのだその余裕は。
同い年で、なんとなく境遇が似ているほかは、大体シキのほうがいい。
そこからくるのだろうか。




「では女を作ってもいいな?」
「好きにすればいいだろ」
「そうか」
「そうだよ」




開いた間に、またシキが笑う。
笑うなとばかりに拳を胸板へ打ち込むと、いきなり腕が動いて、シキの顔の間近に体を寄せられた。
暗くても、シキの顔は綺麗だとすぐにわかる。
なんとなく嫌味なほど整ったその白い肌に手を伸ばして、触れた。
恐ろしく現実味のない相手だから、その赤い目がだんだん傍に寄ってきても、頭がぼんやりして状況が呑み込めない。
彼の黒髪が目に入り、つい瞼を下してしまう。
校舎内ではやたらしつこい癖、こういうときシキは軽く触れる程度にしかしない。




「…やめろ」




腕が緩んだ隙をついて、シキに背中を向ける。
それでもシキは構わず、しばらくの間項に噛みついたり、髪を引っ張ったり、好き放題していた。
それが止まったのはいつだったか。
気づいたら時計は深夜になり、シキも寝てしまったらしい。
たった一人起きていたアキラは、寝返りがてら反対側を向く。

やはり寝ている。
あれだけ勝手にしていた癖、先に寝るとはどういう了見だ。

少しだけ腹を立たせながら、アキラは笑った。
先程のお返しをして、胸元へ頭を寄せた。
回った右手はしっかりシキの背中にしがみついて、彼は安心しきった息を吐いた。













明日よりも近いところで





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