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矜持の刀
*ED2





シキは大概の外遊先で、熱烈な歓迎に遭う。
前々回は船が沈み、前回は銃撃戦に巻き込まれた。
とは言ってもそれらは相手国の不手際であるから、担当者の首を撫で斬りにするだけで不問としてきた。
伴っていたアキラは不服を隠そうともしなかったけれど、結局従った。

しかし今回は違う。
護衛を向こうの言い分で引き剥がされ、尚且つ銃を構えた相手国の兵に囲まれて、シキは唇を吊り上げた。
すぐさま撃たないところを見ると、恐らくライン絡みの情報をもっているのだろうと予測できた。
今までが回りくどかったというのもあるけれど、こういった単刀直入な国は、嫌いではなかった。
それはあくまでもシキの考えであり、鉄面皮を貫く傍らの秘書官がどう思っているかは、別であるが。


「国賓として俺を招いた割に、随分な歓迎だ」


どこのものとも知れない言葉でわめき散らす男らを眺め、シキは悠然と言った。
左手に持った刀を捨てろと指示をしているというのは、朧気ながら理解できた。
尤も、シキにせよアキラにせよ、指示に従う義理はなかった。
どちらに非があるかなど、明かである。
少なくとも戦争を起こすには、いい口実だった。

少しずつにじり寄ってくる兵を睨み据えて、アキラの手が刀の柄にかかった。
こんなときでも何の感情も浮かばない、冷たい青の瞳は、いつ見てもシキを強く引きつける。
つい喉を鳴らしたシキは、業を煮やしたらしく背後から銃底部で殴りかかろうとしていた男を、あっさり切り捨てた。
何が起きたのか理解し難かったのか、しかし崩れ落ちる仲間をただ見るような愚を、彼らは犯さなかった。
とはいえ結末は、変わらない。
アキラの抜き放った刀が鈍い光を帯びる。
何の合図もなかったけれど、二人は同じタイミングで動いた。
検問を強硬突破し、遅ればせながらやって来た部下達が思わず息をのんだほど、互いの背中を任せた彼らの動きは、美しかった。





矜持の刀


 


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