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あの日の残像が消えない
*本編後






雨の日は、よく夢を見る。
それはいつも、決まった夢で。


あの日、あの街の路地裏で事切れた幼なじみが、今の自分を見てなんと言うだろうか。

嘆くか。
変わってしまった自分を。
悲しむか。
手を染め、引き返せなくなった自分を。
笑うか。
当然の報いだ、と。

どれでもないように思うのは、傲慢か。


彼は、迎えに来てくれているのだろうか。
帰り道も、行く道さえもわからない俺を。
伸ばされた手を前に、いつも謝るしかできなくて。


まだそっちにはいけない。
離してはいけない人が、いる。
そう言うと、幼なじみは、



そうして目を覚ました俺の視界は、いつも赤を捉える。
赤の持ち主はたいてい、冷や汗の止まらない顔を、指先でなぞっている。
構うな、と、言えているのだろうか。
毎回掠れた声しか喉は発さず、通じているのかもわからない。
彼は、普段から饒舌ではないのに、殊更黙っている。
代わりに、時に言葉よりも雄弁な手が、ただただ優しく視界を塞ぐ。
そうされると、泣き出したくなると、わかっているのか。


もうすぐ夜が明ける。
朝がくれば、優しい手は消えてしまう。
今だけ弱さをさらけ出すことを許されたような、そんな気さえしてしまう。
あと少しだけ、縋っていいだろうか。

幼なじみを殺した自分を、まだ完全に受け入れきれていない、俺を。





あの日の残像が消えない


 


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