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様々な時間帯における攻防戦
*ED2




目が覚めたら世界が回っていた。
比喩でも誇張でも無く、アキラにはそう感じられたのだ。
それが目眩だと気づくのに時間はかからなかった。



「休暇だと思えばいい」



ベッドサイドの椅子に腰掛けたシキは、皮肉っぽく笑った。
アキラは瞬間表情を険しくしたものの、目を閉ざし押し黙ることで無言の抗議を行うことにした。

確かにここ最近は仕事がたて込んでいたが、貴方のせいでもあるなど、言えるわけもなく。


「俺は仕事がしたいのですが」


そう言ったところ、鋭い一瞥をくらった。
再び黙り込んだアキラの頬を一回撫でて、シキは喉を鳴らした。
アキラは、遊ばれていると理解している。
しかし納得出来ないものは出来ない。


「たかが目眩です」
「許さん」


総帥、と、声を紡ごうとした唇はシキの指先で押さえられていた。
彼はひどく真剣な顔をしていた。
アキラが思わず目を見開くほど、それは稀な表情だった。


「許さんと言った」


その声に合わせて、臍の印に鈍い痛みが走った。
僅かに顔を歪めたアキラへ、シキは笑みを浮かべた。
それは彼が普段見せる表情であり、その中をどれだけ探しても、先程のあの顔は見いだせなかった。


「主の命は素直に聞いておけ。それが判らんお前ではなかろう」


そう言いながらシキは立ち上がった。
見送るしかできないアキラであったが、扉の向こうへ消える姿を見つめ、小さく呟いた。
どうやらその言葉はシキに届いたらしい。
ふと止まった体は、次の瞬間肩を揺らしつつ今度こそ出て行った。

少しは意趣返しが出来たか。

アキラは、ぼんやりそれだけを頭に浮かべ、ベッドへと倒れ込んだ。





様々な時間帯における攻防戦


 


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あきゅろす。
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