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深夜の攻防戦
*虎穴ED




いる。


アキラはそう確信し、そっと隠し持っていたものを枕から引き抜いた。
シキは横で眠っている。
幸い、腕を回されていないから、動きやすいだろう。
呼吸を整えて、構えた。

敵は一。
冷静な対応を心がければ一撃でしとめられる。
傍らの男がいつ起きるとも知れないため、即座に決めなければならない。
アキラは神経を集中し、ただただ相手の動向を探った。
せわしなく動き回っていたそれは、ある一点で止まった。
またとない機会に、アキラはすぐさま手に持っていた鞘を振り下ろした。
しかしそこは、相手も伊達に素早くはない。
超人的な反応を見せて、かわした。

短い舌打ちが、アキラの口をついた。
奴はこの闇の中、こちらを伺っているのだろう。
アキラがいくら暗がりに慣れているとはいえ、限界がある。
再び動き出した気配へ、鞘を構え直したときだった。


「なんの騒ぎだ」


シキが起きてしまった。
寝起きとは思えない声の主は、鞘を構え睨み据えるアキラを怪訝そうに見ていた。
対してアキラは、ひたすら敵を見ていた。
敵は、直線的な動きで壁を這い上ったかと思うと、いきなり飛んだ。

飛ぶ奴を見るのは、初めてだった。

アキラは思わず小さく息を呑み、身を屈めた。しかしアキラの頭上を通過する前に、羽音が止んだ。
恐る恐る目を開ければ、奴はシキの掲げた右手の中、もがいていた。
絶句し、ただ見守るしか出来ない。

「お前はこれ如きが恐ろしいのか」
「そうじゃない。…生理的にだ」

そんな姿を鼻で笑い、シキは掴んだ奴をアキラへ向かって投げた。

アキラは次の瞬間、らしくもなく短い悲鳴を上げた。





深夜の攻防戦

 
 

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