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夢見ることも許せずに
*ED3




名を呼ばれて、シキは顔を上げた。
ベッドの中からひょっこり顔を出したアキラが、なにやら物言いたげにこちらを見ていた。

「なんだ」

と尋ねてみても、首を振るばかり。
肩をすくめて書類へ目を戻す。
しかし視線がひたすら付いてきて、業を煮やしたシキは少々乱暴にペンを置いた。

「言いたいことがあるなら言え」

アキラは、珍しく僅かな逡巡を見せた。
ややあって、視線を落とした。

「シキはさ、殺したひとが夢にでる?」

鼻で笑おうとして、シキはやめた。
こういう妙なことを聞くとき、決まってアキラの頭を占めるのは過去の人間なのだ。
忌々しいにもほどがある。

「有るはずがない」

きっぱり答えを返す。
するとアキラは、みるみるうちに表情を変えて、シキへと手を伸ばしてきた。
なにしろいつものことなので、シキは静かに立ち上がり、それを掴んだ。

「俺が寝るまでいてくれる?」

不安に満ちた目をのぞき込んでも、そこに写るのはシキ自身。
元凶たる男は見えない。
それが腹立たしい。

「ああ」

ただ静かに、シキは囁いた。
毛布を掛け直してやると、握り締められた手に更なる力が込められた。

「あいつ追っ払って」

アキラらしからぬ、震えた声音を敢えて気にとめず、シキは頷いた。
忌々しい男。
アキラが自分以外を考えるなどあってはならないことなのに。
たとえそれが、記憶だろうが、夢だろうが。




夢見ることも許せずに





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