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ギリアが咲いていたら


鼻歌交じりにアキラは回廊を行く。
周囲を取り巻き戦々恐々としている人間など目に入らないかのように。
そのまま、軽い足取りで大きな扉をどうにかこうにか開けた。
室内は、即座に凍りついた。
そして部屋の一番奥に座する王へ、視線が集中した。
王は、普段動かない顔を珍しくしかめていた。

「その様はなんだ」
「ちょっとそこまでお散歩してきた」

一体どのような散歩をすれば泥まみれになるのか。
もの言いたげな目を無視して、アキラはにこにこしながらシキの側へやってきた。

「ねぇ、庭の花が満開だよ」
「…だからどうした」
「お花見」

アキラは、普段約束など覚えていない。
なのにどうしてこういうことは覚えている。
以前癇癪を起こした際、半ば無理矢理約束させられてしまった己の不甲斐なさを呪うべきか。
シキは、力一杯嘆息し。

「片づいたら行く。部屋に戻れ」
「約束破ったら許さないから」

満面の笑みで言い、くるりと踵を返した。
そして、並んだ部下たちに笑みを振りまきつつ、退室する間際、

「お仕事頑張ってね」

小さく手を振り、漸く闖入者は去った。
後に残ったのは、妙に浮ついた空気。
それは、兎に角素早く仕事を終えたいシキの咳払いで、払われた。





ギリアが咲いていたら


 

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