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ファンシーキャット
*ED3




雨は冷たい。
それくらい判るのに、何回もそんなことも知らんのか馬鹿めと言ってくるシキには少しうんざりする。嘘。シキが喋るだけで俺はそこそこ幸せだ。


温室はあったかい。
これはきっとシキは知らない。シキは温室に近寄らない。理由は判らない。俺のお気に入りの場所なのに。少しだけかなしい。かなしいってなんだっけ。


太陽もあったかい。
ただ俺は本物は見たことない。温室にあるきつい光が太陽の代わり。だからこんなざんざんぶりの雨の日だって温室はぽかぽか陽気。シキはこないけど。


今、このみっつがある。
動かない頭を動かして考えた。
ざんざんぶりの雨に打たれればシキが飛んでくる。でも怒る。
ぽかぽかの温室の中でずっと寝ころんでる。多分、ずっと待ってシキが来る。
真っ暗な空に浮かぶ眩しい太陽を見て過ごす。シキ、来るのかな。


シキならきっといい子じゃなきゃ優しくしてくれない。
俺はいい子だから、温室のガラスを割った。
ぽかぽかの温室と光の塊と雨がごちゃごちゃになった。
我ながらいい考え。
これでシキは飛んできて、でも怪我してないし冷たくないから怒らないし、温室も半分位寒くなったから、入れる。


案の定シキは飛んできて、なんか不機嫌そうに言い、結局優しく体を持ち上げてくれた。
置いてくのが悪いんだ。
なんて言ったってシキは俺を連れてくはずないから、抗議として俺はベッドまでだんまりを決め込んだ。





ファンシーキャット


 


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