短 ある晴れた日に。 *とらあなED 空は綺麗に晴れ渡り、移動するならもってこいの天気である。 なのにアキラとシキは二人揃って宿の一室にいる。 どうやらはずれの土地らしい。 到着した当初から、向けられる視線と飛び交う怒号で、なんとなく察しはついていたが。 「アキラ」 最初こそシキはいつものように闘うことを喜んではいた。 しかし流石に、訓練されていないただのチンピラ相手に嫌気がさしてきたのか、専らアキラに任せだしている。 アキラとしては、いい迷惑だが。 「アキラ」 彼の、どこか咎めるような口振りに、アキラはただ黙って刀を持った。 そして、脱ぎ捨てられていたシキのコートを力一杯踏みつけ、部屋から出た。 帰ったら、躾だとかなんだとかでまた体を開かれるに違いない。 あいつ等が騒ぐせいで自分はこんな目に遭うのだ。 考えているだけで腹立たしい。 全て、全て表の連中が悪いのに。 アキラはきつく鞘を握りしめて、扉をやたら勢いよく開けた。 その後繰り広げられた一方的な光景を窓から眺めていたシキは、ややあって小さく欠伸をこぼした。 そして、今日は案外暖かい日だったらしいと、今更ながら気がついた。 ある晴れた日に。 [*前へ][次へ#] |