[携帯モード] [URL送信]


うさぎ様より
*終焉ミッドナイト様よりいただきました!





新しい土地は田舎の様な風が涼しい場所だった。
茶色に青と赤のラインが入ったマフラーを風に僅かに靡かせ、アキラは木でできたベンチに腰掛けた。
珍しくシキよりも早く起きてしまったから土地を把握するためと言う名目で散歩しに来たのだ。
塒を出るときにちらりと見た時計は4時過ぎをさしていた気がする。
早起きの習慣があまりなかったアキラがシキよりも早く目覚めるのはもしかしたら今日がはじめてかもしれない。悲しきかな誇張でもなんでもない紛れもない事実であった。
いや 過去に一度くらいはあった筈だ

思い直すのも無駄に思えて止めておいた。変に思い出して古傷を抉るのはごめんだ。
現に真っ先に思い浮かんだのは生きた人形に成り果てたシキの姿だった。

肌を刺す風がいやに冷気を帯びているような気がしてアキラは気休め程度に着てきた薄手のコートの前を合わせた。
過去とは厄介なもので、忘れたいと願ったところで忘れられるような物ではないのだ。
シキが眠っている間、別段自分の感情なんて物は考えもしなかった。
今考えるとシキに対していい感情ばかり持っていたかと言うと、それとはまたすこし違った様な気がする。誰しも自分の体を良いように蹂躙した人間に対して抱く情は決して好意的な感情ではない筈だ。

薄く吐き出した息が白みを帯びる。
それを目を細めて見ると、アキラはポケットに入れていたカイロを握り締めた。

「お前はそんなに躾されたいのか?」

振り返ると、シキが腕を組み近くの樹に寄りかかっていた。
白い鼻を赤く染めているのを見て、アキラは笑ってしまった。

「走ってきてくれたのか?」

「気色の悪い事を抜かすな」

いつもなら押し黙ってしまいそうな睨みでも、心なしか間抜けに見えてしまう。
堪らず吹き出してしまった時 鬼の様な睨みを受けてしまったが、アキラは構わず笑い続けた。
むっつりと黙りこくったシキを宥めるように手袋も着けていない白い手を掴んだ。

「帰ろう。」

「さっさとしろ。」

握られた手はそのままにシキは塒に向かい歩き始める。
アキラは手に持っていたまだ暖かいカイロを公園に設置されていたゴミ箱に投げ入れた。カイロは弧を描いてゴミ箱に収まる。

カイロは要らない、
そんな気がしたのだ。

困った事に目の前で歩き続ける男にアキラはすっかり絆されてしまったらしい。
一番の問題は自身がそれを心地好く思い始めている事だ そう考えてアキラはまた笑った。

別離と帰家性
(マフラーいるか?)
(舐めるな腑抜け)








------------
電車にて不審者一歩手前の顔になりました。萌えるって思わず呻くどころか動悸も発生させるんですね。私も見習うべきだ。
うさぎ様、ありがとうございました!大切にさせていただきますね。





[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!