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もとみ様からいただきもの3







「はあ・・・・・・はあ・・・・・・っ・・・はあ・・・・・・はあ・・・」

空の青が目に染みる。
暑い。
いや、熱い かもしれない。
風が汗の零れる身体を吹き抜けていくが、そよぐ程度の風では上がりきった身体の熱を冷ましきることができなかった。
ありとあらゆるところから汗が噴き出ているのを感じるが拭うことも出来ずに腕を地に放り出したまま、俺はひたすら荒い呼吸を繰り返す。
重たい頭を持ち上げて向かいを見遣れば、シキも似たり寄ったりの状況であった。以前ならばまだ座り込んで息を整える程度で回復していたはずだが、長い冬眠から覚めて間もない身体は彼の想像以上に錆び付いていたようであった。
今日は互角。
やっと互角にまで持ってこれた・・・。
勝利を掴んだわけではないが、何とも言えぬ充実感が俺を包んでいる。

「ふ・・・・・・ぅ・・・・・・」

多少落ち着きを取り戻した身体を持ち上げてみる。
周囲の地は、今までの死闘を物語るような跡があちこちに残っていて、ちぎれてしまった草をつまんだら少し申し訳ないような気分になった。
視線を移すと、まだシキは倒れたまま。
無理もない。
しばらく前までは、歩き、走ることも覚束ない状態だったのだ。それが今や、互角の勝負ができるまでになった・・・己の武器と、持てる力と、技、手段、気力の全てを使って。
大切な何かを失ったように見えたシキ。一度は生きることすら拒んだ彼に再び剣を取れと言うのは酷なことではないのかという思いが何度も頭を掠めたが、今日この日に、その思いは完全に否定された。
喜ばしいことだ。

俺は立ち上がった。
流石に消耗が激しく、まだ足はふらつくがゆっくり歩く分には大丈夫そうである。
彼の側に立つと、まだ荒い呼吸が耳に届く。汗で髪を顔に張り付け、眩しい青から隠れるように目許を手で覆っている。その白い手には皮膚の擦り切れた痕が残っていて、四肢や胴には今しがた付けた痣やら傷やらが破れた服の端々から覗いているという酷い格好だ。かくいう俺も似たようなものだが・・・。
そう思うと、何やってんだろうな、と可笑しい気がした。
つい、ふ・・・と笑みを漏らしてしまう。

「何を・・・笑っている・・・」

掠れた低い声が返ってきた。
せわしなく呼吸をしていた胸は落ち着いたようだ。口の端に浮かぶ笑みを隠さずに言う。

「別に」
「フ・・・・・・生意気な奴め」

答えるシキの声にも俺と同じものが含まれているようで・・・それを聞いただけで腹の底から使い果たしたはずの力が湧いてくるようだった。
ちらりと手を退け、覗かせた彼の赤と目が合って、俺は笑顔と一緒に手を差し出した。

草の切れ端が、ひらりとそよ風に舞っていた。








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だから何度でも言ってやる、シキアキ嫌いって嘘なんだろ?私と語り合えるのに嫌いって…ねぇ?



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あきゅろす。
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