[携帯モード] [URL送信]


もとみ様からいただきもの
*とらあなED




「甘い」
「あんたホントに甘いものが駄目なんだな・・・でももうこれしかないだろうが 」

一口かじって突っ返して来たシキに呆れた。
本日の夕食:新発売のアップルパイ味ソリド1本だけ。

正確には1本を二人で分けているから1/2本だ。全く嬉しくない。むしろ、さもしい。ただでさえ野宿という非常に笑えない状況下でこんな有様では涙が出てきそ うだ。
何が悲しゅうていい歳した野郎が二人、身を寄せ合って携帯食料を齧りあわねばいけないのか。これが女とであればかなり美味しい状況だ。腹が減っても我慢できよう。それがどうして・・・こいつの親でもないのにこんな意地っ張りの心配をしてやらねばならないのか。もう嫌だ。

「ちゃんと食べろよな・・・もう3日目だろ?」
「ふ・・・・・・アキラ、貴様の身体はもう音を上げているのか?情けない」

そう嘯いているシキの声は明らかに弱々しいのだが。
そう、こいつはこの3日間飲まず食わずで過ごしていた。
かくいう俺もお尋ね者の身で、追っ手に厳戒体制を敷かれている街に入ることが出来ず、今ようやく食べ物を腹に入れたところだ。正直しんどい。
自分は食に対する欲求は薄いと思っているし、事実、1日飯を抜くことなどかつてはしょっちゅうだった。だが“食べない”のと“食べられない”のでは、苦痛という意味でそこに雲泥の差が生じる。何で今まで故意に食べないことがあったのかと過去の自分に腹を立ててみたくなった。もちろん意味はない。
自分がこんな状況だからシキもそうなのかと思い、唯一残っていた食料であるソリドをまるごと奪われないうちに半分を勧めてみたのだが、彼はいらないという。
馬鹿かこいつ。やせ我慢だろ。俺でもわかる。

「ああそうかい。なら、俺が食べても文句は言わないな」
 俺だって腹は減っている。むこうが意地を張り続けるならば気遣いは無用だ。
半分になっていたソリドを一口。シナモンのきいた林檎の甘いフレーバーが空腹に染み渡っていく・・・。
・・・・・・うまい。なんてうまいんだ。所詮ソリドなのに。
久々の食べ物に、俺の身体は貪欲に反応した。よしよし待ってろ俺の腹。今残りを食べるからな・・・。
しかし口を開けてソリドを頬張ろうとした次の瞬間、横合いから伸びてきた手に手首を掴まれ、俺のソリドはシキの口の中へ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「やはり甘い・・・が、食べられない味ではないな」

食べ滓なんぞ口に付け、満足げに笑いやがるシキ。
その顔面に俺が渾身の左ストレートをぶちかましたのは言うまでもない・・・。




 


----------
これで本人シキアキは嫌いだというのだから世の中はわかりませんね。




[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!