[携帯モード] [URL送信]

挿話(みつめてナイトのSS)
〜戯れの代償…?


クレアさんと舞った、あのささやかな一時。
呟かれた一言の後、周囲を気にするのを忘れてしまった。
この俺が彼女を、少しは楽しませることが出来ていたようでとても満足だ。
笑みを絶やす事のないその顔は、笑顔でありながら笑顔でないように思える。
それはどこか蔭りがあって、真に笑っているのではないように。
だが、あの瞬間の彼女の微笑みは純粋にその場の雰囲気を楽しんでいるようだった。
その笑顔を見ていられるのならば、例え一瞬であろうともこの舞いに全力をかけようと――――。


そして安らぎの地(マイホーム)へと戻ったら謎の封書が。

――――誰かが怒っているようです――――

ナンデスカコレハ?別ゲーで言えば爆弾発生ですか?
いやはや、誰が怒ると言うのだ。俺の交友関係などクレアさんとライズしかいない。
クレアさんは今しがた華麗なダンスを決めてきたところだから、不安度など零のはずだ。
仕様上、ゼロなんてありえるのか?とか思いつつもそういうことにしておいて。
しかし、そうなると該当する者はライズになる。
待ってくれ。いくらなんでもそれはおかしい。
何でアイツが怒るんだ?理由がない。そもそもありえない。
叔父上の下で共に修行を積み、兄妹のように過ごしてきた。
その中で培われてきた俺達の友情が、クリスマスごときで壊れるなど、
この俺がクレアさんにブラックジャックで勝つ並みにありえない事だ。
……ヘンな例えはおいといて。これはこの不可解な出来事の真偽を早急に解明せねばならない。
そのためには――――。




――――いつもは騒動とは無縁の場所、教会。
その静寂は勢いよく開かれるドアとともに破られた。
『エセ神父〜。生きてるか?死んでたら返事するな、怖いから〜』
一瞬で場の雰囲気を変えた青年はとズンズンと歩み寄っていく。
幸い、礼拝堂は無人だった。時季的に神仏に恨み言を言いに来るあの御方もいないので一安心である。
突如現れた青年を一瞥し、神父は大きくため息をつく。
「はぁ……。いきなり何ですか貴方は。それが迷える子羊の態度ですか?」
『フン、この俺とて好きでアンタの所になんぞ来るか。
 ワラにもすがる思いで情報屋としてのアンタの力を借りに来たんだ。あり難く思え』
言われた神父は躊躇して周囲を見渡す。
改めて誰もいないことを確認してから青年を見た。
「不適切な発言はするべきではありませんね、エミリオ君。
 ココでは私よりも君の方が危うい位置にいるのですよ。
 私は神父、サリシュアンは学生、として己を確立していますが、その反面君には何もない。
 肩書きのない外国人の君など、軽くデマを流せばすぐに保安局行きかもしれませんねぇ?」
蔑んで青年を見る。青年は軽く目を閉じて、
『志半ばで死にたいというのなら、別に止めはしないがな』
目を開けると同時に青年の顔色が変わる。無表情に見据えられた神父の顔が強張る。
見たところ、今のこの青年は人を殺せるエモノはもってはいない。
だが神父の知る限りにおいて、その丸腰の状態こそがこの青年のスタイルのはずなのだ。
気圧された神父は少し後ずさりしたが、どうにか平静を取り繕った。
「フ、フフ……。冗談ですよ。少し口が過ぎたようですね。
 私もまだまだ成さねばならぬ事がありますゆえ、今のはなかったことにしてもらえますかな?」
『気味が悪いくらい素直に退くんだな。アンタにしちゃ珍しい』
「引き際を弁えているだけですよ。貴方はサリシュアンとは違いますし、
 ヘタなクチをきくのは自殺行為だと認識しておきましょう。
 それで、一体どんな厄介事があるのですかな?」
問われると、青年は心底困った表情で言った。
『あいつが俺に対して怒っているかどうか調べてくれ』
「……は?」
『だから、アイツが怒ってるかどうか調べてくれって言ってるのさ。
 なに、アンタがちょっと電波を受信すればすぐわかるだろ?』
あまりに真面目に語られるわりにはなんと意味不明な要求か。
互いの立場上、それなりのモノなのだろうと思っていた神父は呆けた。
コホン、と咳払いをしてとりあえず尋ねてみる。
「あのですね、私に聞かずとも彼女については貴方の方が詳しいでしょう?」
『いくら俺とアイツの間柄でも互いに干渉しない事柄ってのはあるもんさ。
 それよりどうなんだ。わかるのか?』
「ふむ……。少なくとも不安度は限りなくゼロに近いですねぇ。
 さして問題があるようには思えませんが?」
取り越し苦労ではないのかと神父は目で問う。
『うーん、そうなのか。やっぱ直接会って確かめたほうがいいか』
腕を組んで唸る青年。
「おや?」
『どうかしたのか?』
「むぅ……。神から妙なお告げが聞こえてきましたが、聞きますか?」
『妙なお告げ?』

――――ライズを怒らせてしまいました(^^;
どうやってなだめる? それとも謝る?――――

『なんだそりゃ(;´▽`A』
「私が知るわけないでしょう。ですがこれではっきりしましたねぇ。
 サリシュアンは怒っていますね、確実に」
『うーむ、やはりアイツなのか。とはいえどうしたものかなぁ』
「さして効果はないでしょうが、とりあえず己のために祈っておくことをお奨めしますよ」
『そうだな。何もしないよりはマシってところか』
しばしの沈黙の後、青年は神父に向き直る。
『つまらん手間を取らせたな。この恩はいずれ仇で返してやるから安心しろ』
「全く、口のへらぬ男ですねぇ君は」
『ハ、お互い様だろう』
やれやれ、と肩をすくめる神父に背向け、青年は立ち去った。
「ふむ……とりあえず掃除の続きでもしますか」
それなりに職務はこなす神父さんでありましたとさ。



『どうやってなだめる?それとも謝る?……か』
結局はあたって砕けろになってしまったこの学園前。
そう待つこともなく、見なれた顔が見えた。
『よう、ラ――――』
「……(・・#)」
ライズ〜と気軽に声をかけようとした。ああ、それだけだ。
俺はやましい事は何もしてないはずだ。なのに何だ、俺を見るその顔は。
無表情で見つめてくるその顔に、ありありと怒りの四つ角が表れている。
考えるまでもない。やはり、明らかに。
『お、怒ってらっしゃる〜!?(; ̄□ ̄』
「……(−−#」
スッ、と横を通りすぎていく我が相棒。おいおい、放置プレイか。
慌てて追いかけてしまう俺。当然だ。
『待った、待ってくれライズ。何があった?』
「別に」
『別に、じゃないだろう。膨らみすぎて爆発寸前て状態じゃないか。
 良くはわからんのだが、俺が原因で機嫌が悪いなら謝る。だから機嫌を直してくれ』
相棒は呆れた、とばかりにため息をついてそっぽを向いた。
「自分の立場も考えず、随分と優雅な振舞いだったわね」
と、やけに刺々しい事を言ってくれる。
いかにも面白くなさそうに目をあわせようとしない。
『え……?』
何の事を言われたのか気付くまでに間を要した。
あのラストダンスの事を言っているのか。
『いや、優雅って、そう言われるほどのモンじゃなかったろ?』
「あの時自分がどれだけ周囲の注目を浴びていたか、わかっているの?」
そう言われると何とも言えない。あの時はクレアさんしか目に入ってなかったわけだし。
「確かに楽しもうとは言ったけど限度があるでしょう。
 任務への熱意が欠けているようね」
『いや、そんなことは――――』
「弁解は良いわ。改善しなさい。ココに遊びに来たわけじゃないでしょう?
貴方はあくまでジョーカー(切り札)だと言う事を忘れないで」
言われたその台詞は深く突き刺さった。
『遊びに来たわけじゃない……か。ああ、そうだ……な。
 確かに配慮が足りなかったかもしれない。悪い、許せ』
素直に謝罪した。だが相棒は途端に表情を変えた。
「……何かあったの?」
俺の表情から何かを感じたのか、態度が一変。心配そうに覗きこんでくる。
『いや、何でもないって。これからはあんまり目立つ事はしないよう善処する』
「そう。ならいいけど……」
何か腑に落ちぬ、と言った表情。だが、言えるわけがない。
俺達がココに送りこまれた真の理由を。この戦の行く末はすでに決まっている事を。
相棒は俺達の行動がヴァルファのためになると思っている。
だが、それは無意味なのだ。それを分かっていながら、俺は――――。
「エミリオ?」
『だからどうもしてないって。そう心配するな。
 可愛い妹に叱られちゃったから、気の弱いお兄さんはクラくなってるだけなのさ』
「自業自得ね」
サラリと言ってくれた相棒。まぁその通りなのだから仕方がない。
『はいはい、反省してますって。じゃ、とりあえず機嫌直してくれたってことで。
 例によってこのまま寮までエスコートしてもかまわないよな?』
「断るわけないでしょう」
相棒も真に怒っていたわけではなかったのか、
既に険悪な雰囲気はなくなっていた。ああ、安心した。



――――そうして、そのまま無事に送り届けた後、
またまた青年はまるでそれが義務だといわんばかりに酒場へ赴くのだった。




面白かったです。(d^^)

巧みにゲームの内容をを織りまぜていて、私のSSには無い素敵な展開です。

フォローストーリーをフォローすると言う難題を軽く突破してしまう、エミリオさん。

クリスマスで格好よくダンスさせたのが仇となったようで申し訳ないですm(__)m

あと・・・、ライズとの微妙な親密さを上手に描けれていないな〜と実感(;;)

もっと精進しますです。(^^;)

(紹介文 山懸有朋)







1/1ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!