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挿話(みつめてナイトのSS)
第21.5章 〜血に勝るモノ…?〜 1

――――ソレは一通の封書とともに送られていた。


ライズとの任務の打ち合わせの後、徘徊する気分でもなかったのでマイホームへと走った
が、
謎の封書とこれまた謎な箱が置いてあった。

『なんだコレ?』
身に覚えのない不審なモノは下手に手を出さないのが常識。
だが俺の場合はそういうわけにもいかない。
何せ、ココに何らかの荷物や封書を送りつけてくる人間は限られているからだ。
間違っても保安局などに持っていくわけにはいかない。自身も危なくなる。

『本隊から俺宛にか?この箱は一体何だろう』
いずれにせよ俺に[何かをしろ]というのは明白だ。
手っ取り早くその内容を知るため、まずは封書に手をかけた。

『これは……叔父上?』


 エミリオよ。そちらは問題なく過ごせているようで安心している。
 今更改めて言うことではないが娘をよろしく頼む。
 この文書が届く頃にはもう過ぎているのかもしれないが、娘の誕生日である。
 軍を離れている故、共に祝うことはできぬが祝いの品は用意している。
 共に箱が届けられている筈。その中に祝いの品が入っている。
 それを娘に渡してほしい。直接送るのは娘のいる寮の関係もあり困難である。
 お前を経由すれば誰に止められることもなく、無事に娘の元に届けることができよう。


 よいな、失敗は許されぬものと思え。        ――――デュノス


『叔父上も粋なことをするね〜』
残念ながらもう今日と言う日付が変わる頃。
今しがた帰ってきたところだというのに、またお邪魔することは流石にできない。
おそらく相棒も既に寝入っているだろう。
ここは明日、改めて届けてやるのが無難と言うもの。
しかし――――

『何なんだろうな、コレ』
ふと、ブツが納められているであろう箱に視線を移す。
叔父上から依頼された大切な品である。丁重に扱わねばならない。
封を解くなどもってのほかだ。気にはなるが、ここは堪えておく。


――――後日、ドルファン学園前。
例によって頃合を見計らって待機する。もはや恒例か。
さして待つこともなく、相棒は現れた。そして開口一番、

「ソレは何?」
俺が肩に担いでいる若干大きめな箱を見て相棒は言った。
相棒にはなんの知らせもなかっただろうから当然の反応か。

『ああ。さる御方からのちょっとした贈り物さ。とりあえずお前の部屋へ行こう。
 あまり人目につくのもナンだ。少し急ぐとしないか』
「さる御方……?気になるけど、急ぐのは賛成ね。下校する生徒から普通に見られている
わ」
まったくだ。こんな箱を担いでいたら目立つなというのが無理である。
善は急げ。さっさと寮へ向かうことにした。
道中、コレについての説明には黙秘権を発動させた。
部屋での方が安心して話もできると言うものだ。


窓から相棒の部屋へ侵入する。ドサリと、肩の荷を降ろして一息つく。

「そろそろ教えてくれてもいいと思うのだけど?」
『ああ。昨日、アレから俺の部屋に戻ったらコレが届けられてたんだ』
言うと同時に封書を見せる。目を通す相棒。

「お父様が……」
どうやら驚きを隠せない様子。当然だろう。
向こうにも向こうでやること山積みだろうに、そんな中で相棒を気遣って品をよこすとは

本隊からの運び屋を途中までに留めておいて、わざわざ俺を使うあたりが徹底している。


ともあれ、無事に相棒に箱を渡せた。これでこの依頼はこなせたと言って良い。
読み終えた相棒は箱を見つめている。中身が気になるのだろう。
俺も同じだが、ここからは相棒と叔父上の親子の領域。
兄妹のようなものとはいえ結局は他人の俺が、
これ以上介入していいものではないと思うのだ――――。

『ま、そんなわけなんだ。俺の仕事はお前にこの箱を無事に届けること。
 これで任務は終わりだな。じゃ、このへんで失礼させてもら――』
「待ってエミリオ。この箱の中身、貴方は気にならないの?」
そそくさと窓から退散しようとしていたのに止められてしまった。
そんなもの、興味あるに決まっている。わざわざ叔父上が遠方から送りつけてきた物だ。


だが、肩をすくめて振り返る。

『あのなぁライズ。いくら俺とお前の間柄でもソレを見るのは野暮ってものだろ?
 叔父上がお前宛に送った大切な品だ。コレはお前と叔父上の問題であって、
 他人の俺が横からでしゃばっていいものじゃないと思う。そりゃ興味はあるけどな』

途端、相棒の表情に陰りが見えた。

「……いいえ。興味があるならここにいて一緒に見て。私が許すから」
スパッ、と。俺の取り繕った建前を切り捨ててしまった相棒。
やれやれ。受け取ったご本人様から許しが出たのであれば退けなくなってしまったな。


相棒が封印を解きはじめた。俺はその光景をぼんやり眺めている。

「服……?いえ、これはドレスのようね」
『ドレスぅ〜?また凄いモンを送ってきたんだなぁ。せっかくだし着てみてくれよ』
途端、相棒はギクッと身震いして振り返る。
なにやら苦笑いしているがどうしたのだろう。

「こ、これを着るの……?」
『だってそうだろう。着るためにあるんだし。それとも何か?
 お前は叔父上からの贈り物を、着もせずに永久封印するのか?薄情だなー』
「そ、そんなことはしないわ。ただ、あまりにも私には合わない気がするから……」
何を動揺しているのか。嬉しいクセに合わないなどと照れ隠しをするとは。

『叔父上がお前に合わないモノを用意したりすると思うか?いいから着替えてみろって』


「わ、わかったわよ。着たらいいのでしょう、着たら――――」
相棒は根負けだと言わんばかりに大きなため息をついた。


そうして寮の外で待機すること数十分。やけに長いな、と思った時、
相棒の部屋の窓が開いた。もう入ってきてもいいという合図だ。

『さて、再びお邪魔しますよっと。で、感想はどう――――』


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あきゅろす。
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