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みつめてナイト フォローストーリー
第22章−1 大人の余裕 〜さくやとエミリオの対決編〜

ライズ誕生日の数日後。
久しぶりにさくやと飲みに行く事になった。
店はいつもの「Bar Meet」だ。
「ハジメに聞いたぞ、意中の女性に誕生日のプレゼントしたんだってなぁ。」
「ああ、そうだが。」
「意外とつれないな、ソフィアちゃんといったかな?その女性と同じように俺達でパーテ
ィーでも開けばよかったものを。」
俺はかぶりを振りながら答える。
「そう言う事が嫌いなタイプなんじゃないか、と思っているんだ。」
その答えを聞き、さくやは腕を組んで考える。
「そうか、そう言う性格なのか。そいつはいろいろ苦労するぞ。」
にんまりと笑うさくや。
「そうかもな。」
俺も相槌を打ちつつグラスを傾ける。
「そういやぁ、山懸からその娘の誕生日があるそぶりなんて全く見せなかったが、御主演
技もうまいのだな。」
「いや、おれもたまたま『エミリオ』という旅人から聞いたのさ。」
さくやはすぅっと目を細めて一瞬の真剣なまなざしをする。
「怪しいな・・・。」
「まぁ、そうなんだが情報は正しかった。俺を騙している気配は微塵も感じられなんだか
らな。」
「ふん、山懸がそう言うのなら構わんがな。はっはっはっは。」
酔いで頭の回りが悪くなっていた俺は思い出した事があった。
「そうだ、そのエミリオって男は強いぞ。ふとした事で模擬戦をやったのだが、かなりの
体術の使い手だ。」
「ほう、それで?」
「腰に2本の短剣を差しているが使おうとしない。」
「なるほど・・・そいつは楽しみだ。」
言葉を続けようとする俺をさくやは手で制した。
「これ以上聞くのはフェアじゃないんでな。」
しばしの沈黙の後、さくやはふいに俺に話し掛けてくる。
「そうだ、その意中の女性はなんて言う名前なんだ?」
「ライズ・ハイマーっていうのさ。」
「ライズか。」
またグラスを開けながらさくやは話を続ける。
「生きて帰ってこなければならん理由が出来たな。」
あいまいに返事をした俺は急激な眠気に襲われた。
カウンターに突っ伏した俺は呟いていた。
「ライズとの事はこうなるはずでは・・・。」
完全に潰れた俺を見つつ、グラスを傾けながらさくやは言う。
「そういうのが、恋ってもんさ。ま、詳しい事は分からんがな。」
その後、酒を堪能したさくやは俺を宿舎まで運んでいったそうだ。

鞘に入った大刀を両肩に乗せ、さくやは森林区にやってきた。
「山懸の話だとこの辺りにいるそうなんだが・・・。」
さくやは大きな音をたてながら、森を進んでいく。
「ん?ひょっとして、君がさくやかい〜?」
ふと見上げると、木の上に男が立っている。
「そろそろ来るんじゃ無いかと思っていたんだよね〜。」
風のように気から飛び下りてエミリオは話を続ける。
「さて、始めるかい?」
2本の短刀は腰に下がったままだ。
「やはりその刀、使う気は無い様だな。」
にんまり笑いさくやは言う。
「う〜ん、これは俺のスタイルなんでね〜。」
もう構えが出来ているエミリオは笑いながら答える。
この2人の間にはこの戦闘を楽しもうと言う、雰囲気が見て取れる。
「ん〜?そちらは構えなしの我流ってところかなぁ?」
さくやは不敵に笑う。
「見抜いたか、山懸が強いと言った意味も分かろうと言うものだ。しかし御主、両腕折れ
ても知らぬぞ。」
「そいつは困る。『ミロ』が飲みにくくなる〜。」
笑顔のまま、一気に2人の間に気が高まる。

さくやは鞘を払い、峰打ちの体勢に入る。
「ではやるか。」
さくやは肩に太刀を乗せたまま歩き、悠然と間合いを詰めている。
その刹那。
さくやの肩から振りおろされる強剣をエミリオは間一髪でかわす。
「ふぅ〜、確かに腕で受けたら粉砕骨折だな〜。こりゃ。」
にやりとさくやは笑った。
「ほう、かわすか。かわされた事は数える程しかないのだがな。」
ホッと一息と言った風で、エミリオは答えた。
「『ミロ』飲めなくなっちゃうのは嫌だからね〜。」
さくやは並みの膂力の持ち主では無い。
普通ならひと振りでもすれば自分が振り回されそうな太刀を、立て続けに振り回す。
「避けてばかりでは勝機は無いぞ。」
呼吸を乱す様子も無いさくやだ。
「う〜ん、まだ大丈夫だと思うんだけどな〜。」
エミリオの自信にも根拠はある。
かわしつづけていると言っても無駄な動きがない。
最小の円運動でかわしているので、隙さえあれば懐に飛び込める。
「そうか、それならばこちらは本気を出すか。」
言うや否や、さくやの剣撃の速度が上がる。
「っ!」
髪が数本剣圧によって散る。
「とりゃぁ!!!」
さくやの気合いとともに打ち込まれた剣はエミリオの予測をこえていた。
キィィィィン!
甲高い音が鳴ると、さくやの太刀筋は2本の短剣によって巧みに剣撃の角度を変えられた

そして、そのままさくやの剣は地面を打っていた。
その隙をエミリオは逃さない。
「くぅ!?」
さくやの首筋に2本の短剣が突き付けられる



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