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みつめてナイト フォローストーリー
素敵な仲間達 〜ソフィア誕生日編〜 1

今日も今日とて訓練所。
戦争がない時はひたすら訓練所での訓練と言う訳だ。
手合わせの相手はハジメとさくやである。
猛獣退治の一件以来傭兵の間で俺達に手合わせを願う奴らが減ってしまった。
まぁ、中には跳ね上がりの傭兵などが一騎討ちなどを挑んでくる。
そう言う奴に限って腕の方はたいした事がない。
どうしてかって言うと、達人クラスの剣の使い手なら相手の力量を推し量る力があって当然であるからだ。
自分から死地へ赴いていては傭兵稼業なんか出来やしない。
戦場で相手の力量が分からなければ格上の相手とあった時に即座に死体になりかねない。
と、ここまで長くなってしまったが、そんな訳で相手がいない。
一通りの汗を流した後に休憩を取る。
「すっかり俺達も有名になっちまったなぁ。」
木を背に座り、鞘に入った太刀を右手で支えながらさくやが笑う。
俺はと言うとその木に立ったまま寄り掛かるだけの休憩を取る。
「面倒が少なくて良いのだろうが、退屈しているんだろ?」
「はっはっはっは、まぁ、そんな所だな。」
ハジメは俺達の前に陣取り、そんなやりとりを見ている。
「その有名になったと言えば他に、もう1人いるそうじゃないか。」
ハジメが答える。
「うん、スーさんを助けたって言う『劉鋼燕青』さんの事でしょっ?」
「ハジメの出番を奪っちまったそうだからなぁ。」
「えへっ、有名になりそびれちゃったね。」
「有名になったら、情報とか集め易くなるだろうになぁ。」
少し意地悪をしてハジメに言う。
「そうやってからかうのよくないんだよっ!」
少しむくれてハジメが怒る。
「はっはっはっは!!」
さくやの笑い声がこだまする。
「こういうやりとりだけを見ているととても手練の剣士には見えんなぁ!!!」
「もうっ!2人でからかわないでよっ!!」
ハジメはむくれてしまった。


スーのお店ではいつもよりはいくぶん楽しそうに仕事をしているスーがいる。
どんな感じかと言うと、あの日以来お店の制服がいつも以上に気合が入っているからだ。
いつも以上にぱりっとした服に、可愛いレースのフリルのついたエプロンを身につけている
「あらぁ、山懸クンじゃない?珍しいわね、お店に来るなんて。」
「ああ、噂の劉鋼燕青が来ているんじゃないかな?と思ってさ。」
「それが来ないのよねぇ、・・・こんな美人のお礼いらないと思っているのかしらねぇ。」
「ふふふっ、『噂のスー・グラフトン』のお礼が怖いとか?」
「しっつれいね〜、これだから年下の男の子なんて・・・」
スーが言葉を続けようとすると、お店の扉の鈴が、からんと鳴った。
「いらっしゃいませ〜。」
素晴らしいほどの営業用スマイルでスーが応える。
先程迄の怒りのオーラ迄消してしまうのが恐ろしいくらいだ。
そんなスーの身体がこわばる。
目の前には180半ばくらいの、頭を真中で一つにまとめた髷を結っているかなり大きな男が立っている。
俺がスーの肩をポンと叩くとスーの緊張がとける。
「えっと劉鋼燕青クンよね?」
「そうだ。」
スーの顔がパッと輝く。
以前プリシラに王宮で再開した時もそうだったのであるが、待ち人が来るととても嬉しい事らしい。
「あの時はきちんとしたお礼の挨拶もできなくてゴメンなさい。」
「いや、気にする必要はない。」
「そうそうっ!お礼よっ!お礼。」
パンっと手を打つ。
スーはお礼を何にするのか全く考えてなかったようだ。
「お礼受け取りに来たのよね?何にする?」
「俺は今日パンを買いに来ただけだ。お礼など必要無い。」
「そうねぇ・・・良い所があるわ!『レストラン・エル』にしましょっ!! そこに一緒にお食事なんていかがかしら?」
全く劉鋼燕青の話を聞いていなさそうなスーは勝手に予定を決めて行く。
「・・・」
それを聞いた劉鋼燕青は顔を真っ赤にしながら少しばかり視線をそらす。
「貴様は、誰だ?」
ようやく俺に気がついたようだ、
照れている所を見られたのがよほど気に触ったようだ。
「うんとねぇ、私の店で働いているハジメクンのお友達の山懸有朋クンよ。」
「よろしく」
右手を差し出したものの、それを握り返しては来なかった。
「何じろじろ見ている?」
「別に、スーと話をしていたらおまえが来ただけじゃないか、英雄様。」
「2人とも仲良くしなくちゃダメでしょう?ほらぁ、握手、握手。」
スーは俺と劉鋼燕青の手を握手させた、おまけに俺の向こうずねを蹴りながらだが。
どうやら、呼び捨てにした事に腹を立てたらしい。
「じゃあ、今度の日曜日でいいわよね。ネッ劉鋼燕青クン?」
「ああ、構わない。」
笑顔を向けられた劉鋼燕青は照れながらパンを買いに来たと言う目的を忘れて出て行ってしまった。
そしてお店の中に取り残された俺とスーと言えば・・・。
「『スー』って呼び捨ては何よっ!年上なんだから、『スーさん』って呼びなさいよね!」
「ゴメン、悪かった。ああっ!そんなに物を投げるなよっ!イタタ」
とお店の中で一方的に怒られている山懸の姿があった。


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