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みつめてナイト フォローストーリー
 一撃の刃(やいば) 〜猛獣 後編〜 2

キャラウェイ通り
「あれれ?こっちの方にも『ライオンが出た』って話を聞いてきたのになぁ・・・。」
走るスピードを緩め、周りをよく見てみても混乱はないようだ。
「急いで来たのにもう誰かがやっつけちゃったのかな〜。」
ハジメは急ぐ必要がないと分かり歩きだした。

そのうちに道のまん中で服や、服が入っているであろう箱を拾っている女性に出くわした。
その近くの地面にはおびただしい血の跡が見て取れた。
「あれ?スーさんじゃないですか?」
スーは服を拾いつつもどことなく心ここに非ずと言った風である。
「ねぇ、スーさんってばぁ!」<
思い切ってスーの袖を引っ張りながら問い掛ける。
「え!?あら、ハジメクン。どうしたの?こんな所で。」
「どうしたのってボクの方が聞きたいんですけど・・・。」
「あのねぇ、今日ここでライオンに襲われちゃったの。」
「え〜っ!やっぱりそうだっだぁ?怪我とかは大丈夫?」
「えぇ、見ての通りに怪我ひとつないわよ。あの人のおかげでね。」
途端にスーの目が遠くなった。
「あの人って誰の事?」
「あの身なりからするとたぶん中華皇国の人だと思うわ。なんかハジメクンや、山懸クンとも雰囲気が違うの。」
「じゃあ、剣なんかは真っ直ぐな剣だったんだ?」
「そう!そうなのよ!!それでね、私の前に立ちはだかって守ってくれたのよ〜。」
目が虚ろなまま答えるスー。
「で、その人は今どこ?」
「それがね、何にも話さないでそのまま帰っちゃったのよ〜。」
「名前も告げなかったんだぁ。」
「あら、失礼ねぇ、ちゃんと恩人の名前くらいは聞いておいたわよ。」
「なんて名前なの?」
「う〜んと、発音が難しいかったわ。確か『劉鋼燕青』(りゅうこうえんじょう)さんって言ってたわ。」
「そういう名前ならきっと中華皇国の人だねっ。間違いないよ。」
そう話ながら、ハジメも服を拾うのを手伝い始めた。
「手伝ってくれるんなら、ついでに家まで送ってくれる?荷物も持ってくれると有り難いんだけど。」
「う〜んと、今は急いでないからいいよっ。」
「ありがとう。」
珍しく年下ににっこりと微笑みかけるとスーは手荷物一つで歩き出す。
少し歩き出したら落ち着いて来て考え込む。
(でも、劉青クンはきっと年下ねっ!レディに対する扱いがなってないんだから!!)
後ろを振り返り、ハジメがついて来てるのを確認してからまた思案にふける。
(ああいう時はせめて家まで送るのが礼儀じゃないの?)
白馬の王子に助けられたかのような憧れの様な気持ち。
それと、今まで自分の価値観とが、せめぎあってスーの心は揺れ動き続けていた。
(まぁ、後の事は彼がお礼をされに来た後で考えればいいのよ。)
と、都合良く解釈をしているうちに家の前まで着いた。

「ハジメクンどうもありがとう。とっても助かっちゃったわ。」
「でもこの荷物はスーさんのお部屋まで運んだ方がいいんだよねっ。」
「そうしてもらえる?お茶くらいは出すわ。」
「じゃあ、遠慮なくいただいていくねっ。」
大きな荷物を運びこんで、2人は一息着いた。
「来てくれるといいねっ、劉鋼燕青さんって人が。」
「そうねぇ、何時来るか分からないからちょっとやきもきもするけどね。」
にこやかにそう答えるスーにハジメは安堵する。
なにせ、獣に襲われた恐怖はかなりのショックを受ける事である事だからだ。
「もう大丈夫そうだから、ボクもう帰るねっ」
「そんなに心配してくれたの?明日には元気でパン売ってると思うわ、いい事もあったから・・・。」
「うん、じゃあ、また週末にねっ。」
席を立つとハジメはシーエアー方面へ歩いていった。

ハジメにとって今回の出来事は剣をふるう事無く終ったのである。
今回は貧乏くじをひいたかのようではあるのだが、実はそんな事はなかった。
街の人々からハジメの功績に対しての嘆願があったからだ。
その内容というとスーの介抱を行った事が紳士的であるとの評価だった。
それゆえ勲功が上がったのはおまけの話ではある。


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あきゅろす。
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