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みつめてナイト フォローストーリー
第16章 一撃の刃(やいば) 〜猛獣 後編〜  1

いつも見なれた景色が凄まじいスピードで後方に流れていく。
わずかに先頭はハジメ、次に俺、少し遅れてさくやといった順だ。
この順番は飛び出した時の瞬発力の差であり、さくやが”のろい”訳では無い。
3人は無言のうちに顔を見合わせるとともに頷き、三方へと散っていった。

シーエアー駅にて
ちょうど客を降ろしたジーンは馬に水を与えている。
「ひとしきり飲んだらブラシをかけてやるからな。」
馬に優しく語りかけた。
それからおもむろにジーンは馬車の上でひと休みをはじめた。
もちろん、優しい眼差しで馬をみつめながら。
馬が水を飲み終ったのを見届けると、ジーンはひらりと馬車から飛び下りブラッシングを始めた。
「よしよし、今日も忙しかったな。後一息で今日の仕事も終りだからな。」
ジーンは大切なものを扱うかの様に、優しく丹念にブラッシングをした。
その時、馬が大きくいなないたのと同時にジーンは振り返った。
「なに!?」
駅の入り口にうなり声をあげつつ近づいてくる白き獣。
「ホ・ホワイトタイガー!」
ホワイトタイガーはジーンに向き直る。
ジーンは馬を守る為に馬とホワイトタイガーの間に割って入り、両手を広げて庇う形を取る。
(視線をはずす事はできない・・・こちらが隙を見せれば襲い掛かってくる。)
じりっ、じりっと、距離を置きながら円を描く様にして少しづつ近づいてくる。
(どうするべきか・・・。)

「ん?駅の方で何かが聞こえるなぁ。」
肩に太刀をのせながらもかなりのスピードで走っているさくやの耳に獣の声が聞こえた。
聞こえたというよりも殺気か、もしくは勘なのかもしれない。
そんな事はともかく、駅に進路を変更する。
「何でもいいが、少しは楽しめるといいんだがなぁ。」
駅に到着してみると人の気配がない。
ふと下を見ると猫科の足跡だ。
「ふ〜む、虎と言った所か、面白くなりそうだ・・・。」
不敵な笑みと供に呟く。
足跡を辿ってみると、どうやら馬の繋いである裏手へと続いているようだ。
「もしや!!」
自分の予想がはずれてくれればいいと思いながら再び駆け出す。
「ジーン!ジーンはいるのか!!」

「さくや、その声はさくやなのか!!」
返事と供に現れた大きな影。
さくやが現れるとホワイトタイガーはさくやの方に向き直った。
強敵の出現と思ったのであろう。
「さあ、かかってきな!!」
「待ってくれ、どうやらこいつは一時的に凶暴になっているみたいなんだ、命まではうばわないでやってくれ!」
無言のままにさくやはホワイトタイガーに突っ込む。
「うりゃぁぁぁ!」
大刀が一閃されると、どうっと音と同時に虎が崩れ落ちる。
「ま、まさか、殺したんじゃぁ・・・。」
剣を鞘にしまい、鞘で虎をひっくり返すと傷はどこにもない。
「ジーンの前では殺生は出来ねえなぁ。でもまぁ、骨の2、3本は折れているかもしれんがな。」
少し照れた様に頭を掻きながら笑う。
「すまないな、無理を言って。」
「なあに、ジーンの注文なら無理でも何でもねえよ。」
にっこり笑い問い掛ける。
「さて問題はこいつをどうするかなんだが・・・。」
「ロープで動けない様にしておいて、地区警備班に連絡しよう。」
「それが懸命だな。」
少し事態が落ち着くと遠くから見ていた野次馬が近づいてくる。
そして1人の野次馬が声を荒げた。
「すげぇ・・・ホワイトタイガーを倒しちまいやがった・・・。」
そこへピエロの男が通りかかった。
「素晴らしい・・・ドルファンは良い騎士を・・・おっと失礼・・・東洋の方でしたか。まさに『虎殺し』と言った感じですね・・・ただ・・・英雄気取りはケガの元です・・・ご注意を。」
そう言うと、ピエロの男は静かに立ち去った。


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