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みつめてナイト フォローストーリー
中華皇国の剣士 〜劉鋼燕青(りゅうこうえんじょう)編〜 2


店内に入ると、休みの日が休日に取れないキャロルは楽しそうに言う。
「ブティックも来んの久しぶりだねぇ−。これで、服でも買ってくれる男でもいればねー、きゃはははは。」
「相変わらず貴方は単純ね〜。」
「そんなもんだよー、もっと面白く生きないとつまんないじゃんねー。」
「あっ、この服なんてどうかしら?」
「あんたも、そんなシックな服ばかり選んでないで、たまにはこういう活動的なものを選んでみたら?」
「そんなの私には似合わないわよ。」
「そっかなー?こんなタイトスカートなんてはいたら男もイチコロなのにねー、きゃははは。」
「でも〜、軽い女って見られるのは嫌だわ。キャロルももっとシックなのにしたら?大人っぽく見えて素敵よ。」
「あー、私は遠慮しとくわ。何か動きずらそうだし、何かあった時に逃げるのに手間取んかんねー。」
「逃げるって何よ、逃げるって。」
少しばかり理解できない様な表情をしながらも、2人の間に笑顔が咲いた。
キャロルはどうやら今日のスーのショッピングの主旨を何となく分かっているのかもしれない。
・・・本人が意識しているかどうかは別にして。
「えっと、これとこれ、これも試着してみるわね?」
「はいはい、こっちも勝手に見繕ってるからさー、気楽にやろーよ。」
「ありがとう。」
そう答えると試着室に消えていった。
「何だかんだ言っても、自宅が仕事場だといろいろ自由にできないから不便だよねー。」
そう言うと、キャロルはキャロルで自分に似合う服を何点か選び、会計をはじめた。
「お待たせ〜。」
キャロルが振り向くと服の山が歩いてくる。
「そ、そんなに買う訳?」
すると服の山が応える。
「もっちろんよぉ、こんだけ全部会計ね。」
にっこりと笑う彼女の顔はまるで憑き物が落ちているかの様であった。

「ありがとうございました〜」
とても嬉しそうな店員の声を背に店を出た。
歩合制のお店なら臨時ボーナスも出るんじゃないかと言うほど売れた様である。
「もうすっきり!これだけ買ったらストレスなんて吹っ飛んじゃったわ。」
「ほーんとよく買ったわねー。何ヵ月分の小遣い使ったのー?」
「わからないわよ、ありったけ使っちゃったんだから。」
「へぇ、よくやるねー。私はお金ためないからそんな風には買えないけどねっ、きゃはははは。」
歩きつつ大きな路地にさしかかる。
「んじゃ、私ん家こっちだから、じゃねー。」
と陽気に言うと、スーには目もくれずさっさと自分の家へと走っていった。
「家まで送ってくれても良いじゃないねぇ。」
と呟くと前が見えなくなる程の荷物を抱えたスーは帰る為に家の方へと歩き始めた
ドスン。
足下で何かにぶつかった。
「いった〜い、どこ見てるのよ〜。レディに対して道を譲るって気持がないの?」
その叱責に対する文句の言葉はなく返ってきたのは、「ガルルルル」という唸り声のみであった。
荷物から顔を覗かせたスーは言葉もなく突き立っていた。
そこにはライオンが牙を向きながらスーの方をみつめていた・・・。

そのころ寮にサーカス団の動物が逃げ出して街で大暴れをしているという情報が飛び込んできた。
暇な時間を過ごしていた東洋人傭兵3名は様々な思いを胸に飛び出していった。
(あの娘無事だといいけど・・・。)
(手柄をたてれば上の覚えもよかろう。なんとしても永住権を手に入れてやる!!)
(やっと、たっぷり暴れられそうだぁ。獣相手がちょっとつまらないがな。)
傭兵のほとんどは『金がもらえる訳でもないのに物好きな奴らだ。』という視線を投げかけていた。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
せっかく買ったものを放り投げはしたものの、スーはそれ以上動けなくなっていた。
口から涎をたらしながら低いうなり声をあげつつ、1歩1歩近寄ってくる。
いったん低く身構えるとスーに向かって飛び上がる。
その刹那。
1つの閃きと供に影がスーとライオンの間に割って入る。
ぺたんと腰を抜かしたスーはその影を見上げた・・・。
東洋人の様であるものの、アルバイトのハジメクンとは雰囲気が違う。
話に聞く中華皇国人の様である。
「・・・。」
無言のまま直刀をかまえ、ライオンに対して威嚇する。
ライオンは邪魔者を排除しようと男に目標を変えた。
グルルル・・・
完全に怒りの咆哮をあげ、男の頭上に飛び上がった。
この作戦は失敗だった。
顎の下ががらあきになった。
その隙を逃さず突き上げ、頭蓋骨まで突き抜けた。
相手が絶命をしたと見るや剣から手を放しライオンに背を向け、スーに向かって手を差し出した。
「あ・ありがとうございます・・・。」
腰を抜かしていたスーは男の助けを借りて立ち上がり、礼を述べた。
その場を立ち去ろうとする男に向けて、スーは声をかけた。
「あ、あのう・・・せめてお名前だけでも・・・。」
「劉鋼 燕青(りゅうこう えんじょう)、劉青(りゅうじょう)で結構・・・。」
「劉青さん・・・。ええっと、私はグラフトンパンで働いているスー.グラフトンと言います。もしよろしかったら、お礼がしたいのですけど・・・。」
了解したかのように左手をさっと振ると劉青は振り返る事無く歩み去った。
スーはその場に立ったまま、しばし劉青の立ち去った方を見つめていた・・・。





どうも、山懸です(^^;)
今回の劉鋼燕青の容貌については御本人からの要望であります。
私が決めた中華皇国の設定ではありませんのであしからず。m(__)m






わおぉ!先日14章があがったと思ったら、もう15章です。
遅筆の私には羨ましい限りです(ネタはいっぱいあるんだけどね(^^;;)
今回は久々のバトル! 山縣の剣が冴えるかと思いきや、いきなり謎の男登場!!
彼をみつめる スーの瞳にはどう映ってるのでしょうか?
そして、サーカスから逃げ出した他の猛獣達は、誰が倒すのか(それとも犠牲者が出てしまうのか?!)
次回も見逃せないですね☆
是非是非是非 頑張ってる山縣さんに 感想を(^^)/







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