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みつめてナイト フォローストーリー
夢見る乙女〜スー・グラフトン〜2
時は過ぎ、お昼を少し回った頃。
「グラフトンパンはここだな・・・。」
日頃は寮で出てくる食事が(あまり美味しくはない)あるためにあまりこういう所は利用しない。
「おっ、やってる、やってる。」
竈の方からハジメが売り場の方へパンを運んでいるようだ。
「いらっしゃいませ〜。」
「えっと、ハジメはちゃんと働いていますか?」
「あぁ、ハジメクンのお友達ね、それはもちろんきちんと働いてもらってるわよ〜、給料分はね。」
この娘はどうも外面は良いようだ。
なにせ営業スマイルが完璧だ。
「あっ、来るなら来るって言ってくれれば良いのに〜。」
俺に気がついたハジメが少しむくれながら文句を言う。
「今日は暇でな、様子を見にきたんだよ。」
「ホントはからかいにきただけのくせにっ。」
少し顔をむくらせてハジメは奥に戻っていった。
「今日はフランスパンが良く焼けているけど、お1ついかがかしら?」
「ん?ああ、じゃそれを一ついただこう」
パンを包んでもらい受け取ってすぐの事。

からんからん。
来客を告げる音がした。
「ああ、クレアさんお買い物ですか?」
「えっ、ええ、どうしても仕事の都合で夜遅く帰るものだから、明日の朝食のパンを買いに来たのだけれど・・・。」
「どうかなさったんですか?」
「最近、男の人が私の周りでうろついているのよ。」
「変な事をされそうになったりとかは?」
とすると、クレアさんと俺の間に割って入ってきた男が間を開けずに言う。
「この私が変な事をこのお方になさるとでもお思いか?おっと、これは申し遅れました。私、エミリオ・イズルードと申します一介の旅人。この度このお方に出会わんがために今まで旅を続けたとの思いが・・・。」             
「とまぁ、こんな訳ですの。家の手伝いとかをしていただけるのは嬉しいのですけれども、世間の目があるものですから・・・。」
とため息まじりに言う。
「大変そうですね」
それ以外に言い様がなかった。
「お店の中で騒がないでくれる?商売の邪魔になるじゃない!」
さっきの態度とはうってかわって厳しい口調になったスーにお店を追い出されてしまった。
「あら、パンを買いそびれてしまったわ。」
「私が何とかいたしましょう!!!」
「いや、このパンを持っていって下さい。俺には寮で出る食事があるので、ちょうど良かったです。」
「いいのかしら?じゃあ、有り難く受け取っておくわね。代金は払いますから。」
「いえ!どうやらこの私が御迷惑をお掛けしてしまったご様子。ならば、この支払いはわたくしめが!!!」
無理矢理俺の手の中に銀貨を入れると、クレアさんに笑顔を向けた。
「今日はこの辺りで帰るといたしましょう。ではクレアさんまた明日。いや、今晩酒場にでも。」
と大きく手を降り雑踏の中に消えていった。
「本当に大丈夫ですか?」
「えぇ、悪い子ではないのよ、ちょっとオーバーアクション気味なんだけれど。」
「そうですね、確かに気前は良いようですね。」 
(しかし、あの身のこなしはいささか気になる。旅人であっても護身くらいはできるはずだが、達人クラスの足さばきだ・・・。)
「それでは、私これで失礼いたしますね。仕事に行く準備もありますので。」
「そうですか、お気をつけて。この辺には柄の悪い輩もいますから。」
「えぇ・・・でもたぶん大丈夫ですわ。あまり考えたくはないのですけれども、何故かエミリオ君が助けに来る様な気がするの・・・。」
「神出鬼没のような所のある男の様に見えましたから、ありえるでしょうね。」
クレアさんは、困ったかのような表情を浮かべなつつ微笑み、駅に向かって歩き出した。

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