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みつめてナイト フォローストーリー
とある男との出会い  〜小鳥遊(たかなし)さくや編〜 その1

11月初旬 朝
「ふぅ、イリハ会戦の痛手は大きいようだ。何せ兵の数が足らないとかで傭兵の徴募をしたんだそうな。」
「そうなんだぁ、強い人が来てくれれば良いねっ。」
「今度は欧州圏を中心に集めたんだそうな。東洋人は少ないらしいな。」
「じゃぁ、ヤポン人は居ないかも知れないんだねっ。」
「そうだろうな。まぁ、足手まといな傭兵がに来なければいいんだが。」
「僕達には関係ないんだけどねっ。」
「まぁな。」



ドルファン港
「はははは!!やっと着いたか、ここがドルファン国か!」
威風堂々とした男が船の甲板に仁王立している。
背中にはひときわ大きな太刀を背負っている。
「まぁ、このオレ様が来たからにはこの国は安泰と言うものさ、はっはっはっは!!」
波止場にふらりと降り立ち、そこに何年でも住んでいたかの様な気楽な足取りで歩いていった。
「とりあえず、街の中心にでも行ってみるか。」
街を行き交う人々は笑顔にみちている。
「なんとまぁ、のどかなもんだ、戦争している様には見えんな。」
大通りに出ると馬車の前に子猫が飛び出している。
「!?」
今までの陽気な表情が一瞬真顔となり猫を助けに飛び出した。
「どぉっ!どぉっ!!」
馬車は猫のいた所から数メートル先で止まった。
「お〜、お前危なかったな〜、死ぬには小さすぎるからな。はっはっはっは!!」
御者が駆け寄ってくるのが見える。
「おいっ!!お前ら大丈夫か!!!」
「おぅ、なんとかな。」
服に着いた埃を払い立ち上がる。
「ありがとうな、気をつけていたんだが・・・。あぁ、名を名乗るのを忘れてたな、俺はジーンって言うんだ。今回は助かったよ。・・・お前ひょっとしてヤポン人か?」
「どうしてだ?確かに俺はヤポンから流れてきた、小鳥遊さくやっていうんだ。まぁ、よろしく頼む。」
「やっぱりそうか、山縣とハジメに似た雰囲気だからなんとなくそんな気がしたんだ。後ろに背負ったその刀の装飾なんかもだけどな。」
「山縣とハジメねぇ・・・聞いた事ある様な気もするが、まぁ、いいか。」
「ふっ、お前なかなか面白いやつだな。今日この国に来たのか?」
「あぁ、そうだが。」
「今日のお詫びに酒でもおごらせてもらうよ。日が暮れた頃にキャラウェイ通りにあるBar・Meetって所に来てくれ。」
「ほう、そいつは有り難い。楽しみにさせてもらうとするか。さて、俺はこれで失礼させてもらう。お前ともお別れだな。」
猫の頭をなでて、地面におろす。良く見るとその猫はこげ茶のトラジマで、尻尾は長く、目がくりくりして、少し垂れている様な感じだ。その猫は首をかしげた上目遣いでにゃぁ〜と一鳴きして動かない。
「ん?なんだ?俺に付いて来たいのか?」
にゃぁにゃぁ、とさくやの脚に身体を擦り付けて甘える。
「かなり気に入られてみたいだな、しっかり面倒見てやれよ。」
ジーンはまるで体重の無いかの様にひらりと御者座に飛び乗ると、トラブルでの遅れを取り戻すかの様にすごいスピードで、走り去った。
「ふむ、かなり威勢の良い女だな。この国にもあんな女性がいるとはな。」
猫を片手に抱いた風変わりな男はとりあえず荷物を置く為に、傭兵宿舎に向かっていった。



宿舎
「なんとまぁ、柄の悪そうなのが多いこと。チンピラにしか見えない様なやつもいるなぁ。」
「まぁ、仕方が無い所だよね。傭兵って言えばお金だけのために命を賭けるって言うイメージが強いからねっ。」
「あぁ、食習慣が違うせいか、かなり凶暴なやつも多い事だし。」
「!?」
俺とハジメは目を疑った。どうやら、ヤポン人がいるようだ。
なんと言っても、背中の太刀がそれを物語る。
「おっきいねぇ・・・。僕が持ったら振り回されちゃうよ。」
「あぁ、いくら防御の必要の無い剣技とはいえ、かなりの膂力(りょりょく)を必要とするな。」
どうやら相手もこちらに気が付いたようだ
「よぉ、おまえらヤポン人だろう?名前は・・・確か山縣とハジメだっけか?」
「何で知ってるの???」
「いや、今日街でジーンとか言う御者の女に聞いたんだ。っと、俺も名乗らなくっちゃな、小鳥遊さくやっていうんだ、よろしく頼む。」
「そうなんだぁ、僕は山田ハジメって言うんだっ、よろしくね。」
「俺は山縣有朋。よろしくな。で、そっちの可愛い相棒は?」
「あぁ、こいつはな、命の恩人に飼われたいとかいう、猫には珍しい忠義の猫らしい。」
「なるほど、推察するに、ジーンの馬車にひかれそうになった猫を助けてなつかれた、っと。」
「まぁ、簡単に言えばそういう事だ。はっはっはっは!!」
「名前はなんて言うんだ?」
「名前はまだ無い。これから決めなくちゃな。」
「可愛い猫だねっ。ははっ、そんなに舐めるとくすぐったいよっ!」
「おぉっ、そうそう、俺は用事があるから、そいつを預かっといてくれ。」
「そうなの?まぁ、可愛いからいいよっ!」
「はっはっは、じゃあ任せたからな。」
そう言って、飄々と去っていった。
「おい、ハジメ。そんなに安請け合いして・・・。」
「いいのっ!じゃあ、僕部屋に行ってこの子にミルクでもあげるから。」
「ふぅ、まぁ、賑やかになる事だけは確かだな。」

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あきゅろす。
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