[携帯モード] [URL送信]













……と、翔のファンが言っていた気がする。

まあそれ(ファンの問題発言)は兎も角、…ともかく翔は文句の付け様の無い位に格好良い。それは紛れもない事実だ。しかし僕にとってはただの“ミテクレノイイオトウト”。適度に格好良いな…僕と翔の違いを見せ付けられたように感じながらそう思うだけだ。純粋に嫌味などではなく憧れの一種とでも言うもの。



そういう僕の容姿は翔と違って地味そのものの容姿。

元々は茶気味の髪だが、地味な顔立ちに対して元があんまりかなと思って髪は真っ黒に染めてみた。前髪は重くしてある。…というか前も横も後ろも、髪は全体的に重い。
翔からも周りからも“暗い”と言われるがそれも仕方の無いことだと思う。

だってそうじゃないか、僕と翔は双子なのにまるで違う。一方はテレビの中の有名人にも負けず勝りそうな麗人で、もう一方は平凡以下。僕がその事にコンプレックスを持っても別に何ら不思議はないと思う。
勿論そんな事は誰も知らないけど(と言うか知らないで良い)一応“根暗”と揶揄される僕にだって痛む心もあれば悩む心も有ると言う訳だ。








「…カイ〜、まじに見捨てないでよ……」
「…、…ごめん。ボーっとしてた」


翔の声にはっとした僕は翔を見た。まあ、翔の顔を見てボーっとしてたから翔の瞳をちゃんと見た、と言う表現の方が正しいのかもしれない。
それは兎も角、さっきまで何の話をしていたんだ?



(…ああ、翔がこの高校の校風に納得出来ないって愚痴っていたのか、全く…詮無い事で無駄に悩む奴だ。今頃になってそれを言うのか?)



そう思ったがその言葉を飲み込む。翔は知らなかったみたいだけれど中学の頃だってファンクラブは立派に存在していた。それだけ人を惹き付ける力があるという事なのだから喜んでおけば良い。


「事実は受け止めるしかないんだよ、翔」
「……受け止め切れねーよ!!」


暫くの沈黙、のち、逆ギレ。

…うん、今だけは翔の理不尽な逆ギレも僕は許してあげよう。おにーさんだからね、寛大な心を持った、


「だってココは男子校だろ!?生徒も教師も俺と同じ男で、同じ性別で、しかも同姓だぞ!?」
「結局はどの説明も同じ意味だよ馬鹿」
「男が男に恋愛対象としての愛を…恋を出来るなんて…意味が分からねえ!!」
「この世界には“同性愛”と言うものが存在しているから仕方が無い事だよね。あれだけ女を取っ替え引っ換えしてたのに、ソッチ方面は全く知らない翔の方が僕は意味が分からない」


…どうやら僕の寛大な心を以ってしても、翔を励ますと言う動作には限界と言うモノが存在するらしい。
それでも翔が嘆き、僕が励ます(が、実際何と無く嫌味的な物が混じってしまう)。それは確かに僕と翔の日常だったり。





僕の弟・篠原翔であり“Shady path”というバンドのボーカル・ショウは、現在通っている高校の校風である同性愛について深刻な被害を被っていた。因みにではあるが僕の知る限りでは翔はソッチの気は無い。皆無だ。
…まあそう言った趣向を知らないと言う時点からして明白な事ではあるのだが。




これから高校生活まだまだ後約2年と幾らか、確実に翔の(ホモ)ファンは増えていく事だろうし、その度同性愛に翔は苦労していくかもしれない。
同様に、確実に翔が被害に遭っても僕は翔を助ける事は出来ないし、また、助けようとも思わない。僕の弟ではあるが、その前に人間である僕はやっぱり我が身が一番可愛い。…そのことに関して別に翔に悪く思ったりはしないけど。

それに翔なら何とかなる筈だ。だって女の扱いは手馴れたものだったろう?男もそんな感じでうまくあしらえばいい。





心なしか顔を青くして机に突っ伏す翔を横目に朝自習終了のチャイムを聞きながら、僕はまた小さく溜息を吐いた。
……それが笑いを押し殺す為の溜息だったと認めはしないが否定もしないでおこう。







[*退][進#]

4/15ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!