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side→χ






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 【 χ 様のマイページ 】
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今日もまた、入る。

そう書かれたボタンを決定キーで入る。
其処は俺の自己主張の場。





≪新着メールが来ています。≫





入ってまず飛び込んだものはその文字。
入ってまずチェックするものでもある。

サイトの中でまあまあの知名度になってからはよくメールが来るようになった。それが結構嬉しい事で、若干顔が綻ぶのを頬の筋肉が上がることで感じる。


(この前の歌詞についての事か…差し詰め“歌詞を提供して下さい”だろーな)


マウスの右クリックをカチリと鳴らし次々に開けていく。メール内容は予期していたものとほぼ同じ。


(さて、どのメールに返信を送ろうか…)


考えながらも右クリックの定期的な音を鳴らす事だけは止めない。…何と無くクリック音が好きでマウスパッドの方を使わないのは俺だけだろうか。
ふと、その中の一件のメールの、その内容が目に留まる。



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5/25 19:34 *Syou*
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はじめまして。

χさんの作る歌詞、
毎回見てます。
歌詞の中に引きずり
込まれるような独特の
世界観が大好きです。

俺には創り出せない世界が
其処にはあって
χさんが作る歌詞の魅力に
圧倒されています。



話は変わりますが
俺はバンドをやっています。
歌詞を担当していて、
今回に限って
歌詞が思い浮かびません。

メロディーは出来上がっていて
それは今までの曲の中で一番の
出来なのにそれに合う歌詞が
思い浮かばないんです。
何度も書き直して訂正して
それでも歌詞は出来なくて。

突然ですがお願いがあります。
俺のバンドの為に歌詞を
書いてはくれませんか?

一度は作った歌詞を此処に
載せてχさんにアドバイス
してもらう事を考えました。
でも出来の悪い歌詞を
χさんに良くしてもらったと
してもその歌詞はあくまで
“マシ”になった
としか言えないような
気がするんです。



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一通りそれを読んだ。メールを読む限り、宛て先のコイツはスランプなんだろう。良くある事だと言えばそれまでなのだが。
歌詞が出来ない苦悩が滲み出たその文章に、どうしようかと考える。


(“Syouの本当”次第かなー……)


今までで一番のメロディーが手元にあったら、旋律に融け込む様な詞をつくりたいと思う。
より近く、より交わり合わせたい。
旋律と歌詞の隔たりが無い位の繋がりを求めたい。

俺がそう思って歌詞づくりに取り組むようにコイツだってそう思ってる筈だ。

俺だったらどうするだろう?

思うようにコトバが浮かばない…
一向に出来ない歌詞…
それでも期限のある時間と焦燥感…





(俺に任せるって、コイツにとってなんなんだろう)


メールの内容からして中途半端が嫌いなプロ意識の強い、そんな感じのイメージが俺の中ではある。普通、今までで一番の出来のメロディーをバンドが創り上げたならそれに合うだけの、つまりは今までで最高の歌詞を、自分が作りたいと思う筈だ。

少なくとも俺だったらそう思う。
徹夜してでも何でもスランプから抜け出してやって、それでデカイのを一発!…まあ現実はそう甘くはないけれどその心意気で、我武者羅に進む。






(コイツは、どうなんだろう)


その選択は本当に良いのだろうか?
頼らずに自力の方法も選択肢としてはないのだろうか?

そう思った俺は画面から顔を上げて大きく息を吐く。見上げた天井は真っ白だった。







[*退][進#]

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