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風のフアレク



とある城の大広間で、ひざまずいて頭を垂れている数人の部下達を、目つき鋭く威厳に満ちた一人の長身の男が、腰掛けた座の上から立ち上がり、細長い顎鬚を指で撫でながら見下ろしている。

「損害と現在の状況を、ためらわずに申せ」

その男の、感情を表に出さない落ち着き払った態度が、かえって部下達のただならぬ緊張感を倍加させている。

やがて、部下の官吏のうちの一人が、額に浮かんだ汗を拭いながら、四角く強張った表情のままに、言葉を紡ぎ始める。

「申し上げます、総督閣下。
脱走した捕虜達は、近隣の山中へと逃亡し、こちら方の死傷者は数十名に上っています。既に追討の兵を多数動員しておりますが、未だ捕虜達の行方の手がかりとなる情報は得られておりません……」

そうして総督≠ニ呼んだ男に対し、部下の官吏達は延々と状況報告を続けていく。

しかし、その場の張り詰めた空気を突然に変えたのは、大広間に突如として響きわたってきた、一つの慌しい物音だった。

「ご、後生だ、見逃して下せえ。俺あ、本当に何も知らねえんだ」

「黙れ! 言うとおりにせねばたたっ斬るぞ」

慈悲を乞う一方の叫びと、それを押さえつけるもう一方の叫び。それと共に、みすぼらしい身なりの男が、兵士の男に首根っこを捕まれ、引きずられるようにして部屋に入ってくる。

兵士の男は、とうとうその哀れな男を総督の前へと突き出して言うのだった。

「総督閣下、畏れながら申し上げます。
私は刑場にて先刻、この男が捕虜の脱走の手引きをした主犯の男と、何事か言葉を交わしていたのを見たのです。間違いはありません」

「ほう……左様か」

それを受けた総督の男は、怯える男の下に静かに寄ると、彼のことを見下ろして問いただす。

「その男とお前は、どういった関係であるのだ」

「お、同じ里にいて……たまたま見知った仲というだけだ」

「そうか……ならばその者についてそなたが知りえる限りのことを、この場で言ってもらおうではないか」

総督はさらに、その鋭い両の目を突き合わせるようにして、男の目の前にしゃがみ込むが、恐怖に震え上がるその男に、もはやその圧力に抗する気力は残されていなかった。

「そ、そいつは……」

 

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あきゅろす。
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