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銀黄の翼は天に舞う
とある通信と苦情とのこと

 鳴り響いた通信機を少し眺めた後、それを力いっぱい切った。しかも笑顔で。

「ちょっ、何してるんですか!?」

「ん?大丈夫大丈夫。だいたい誰だかわかってるから」

「いや、それはそれで問題だと思うんですが……」

 あまりにも爽やか過ぎる笑顔の破壊力は凄まじい。

 騎士団員の方もリゼルドの性格を理解しているので、これ以上は何も言わなかった。

 そして、通信相手が誰だかよくわかっている。

 今通信機の向こうでどんな光景が繰り広げられているのかが簡単に想像できてしまった。

 そしてまた、通信機がけたたましく鳴り響く。

 通信機から何やら怒気のような黒い気配を感じる気がするのは、勘違いではないだろう。

「……………」

「……………」

「……………」

「……………あのー、ラルフェスト卿」

「あーうん。そろそろ出た方がいいだろうな」

 リゼルドは、ケタケタ笑いながら通信機を手にした。そのままのノリで口を開く。

「やぁ、イオス」

『何がやぁ、ですか。毎度毎度毎度毎度言ってますけど、通信機には鳴り次第直ぐさま出てください。というか、申請無しで勝手に飛空艇使うのいい加減止めてください』

「そう固い事言うなって。これでも緊急だ、一応。それに申請なら机の上に書いといただろう」

『……………緊急に一応なんて付けないでもらえますかね。ついでに、申請はちゃんと申請書に書いてくださいって何回言えばわかってもらえます?』

「しかたないだろ。緊急だったんだから」

『だとしてももうちょい何とかなるでしょう。書きなぐりの紙切れ一枚残していかないでください』

「わかったわかった。悪かった」

『絶対わかってないし、悪かったなんてまったく思ってないでしょうが、貴方って人は………とりあえず、申請書はこちらでなんとかしときますからさっさと帰って来て下さい。燃料費はきっちりいただきますからね』

「はいはい、よろしくなー」

 そう言うなり、リゼルドはさっさと通信を切った。

 椅子にどかっと座り直すと、伸びをしながら足を組んだ。

 元来、長身で足の占める割合が大きいので、無駄に様になっている。

「これで問題は一つもない。心置きなく、全速力で行ってくれ」

「了解」

 窓の外に向けた視界に広がるのは、どこまでも続く青一色。

 忘れた頃に現れる白い雲が、猛スピードで流れ去った。


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