銀黄の翼は天に舞う 紅の夢A 「……………ぁっ!」 荒い息とそれと比例するように痛む喉、そして汗の冷たさで目を覚ました。 枕に叩きつけた拳は僅かに震えている。 呼吸を整えて握った拳をゆっくりと開くと、じっとりと汗をかいていた。 「……………はぁ」 憂鬱な気分を払いのけるように頭を振るが、たまらずぐったりと頭を垂れる。 シワの寄ったこめかみを指で揉みほぐしてみるが、なんの役にもたたない。 久しぶりに見る夢だった。 おそらく、アレを発動させたからだろう。 「ったく……いつまでも。我ながら女々しいったらない」 自分以外誰もいない部屋で、小さいはずの呟きがやけに大きく聞こえた。 それを聞いて、さらにへこみそうになる。 カーテン越しに鳥の囀りが聞こえ出した。 窓に目を向けるとすでに夜は明けていて、ぼんやりとした早朝の光がカーテンの隙間から零れている。 ようやくベッドから抜け出し、誘われるまま窓を開けた。 朝もやに囲まれた目覚めの景色から、清々しい空気が部屋へと流れ込む。 大きく深呼吸すると、直前まで感じていた胸のしこりが綺麗に消えていくのがわかった。 改めて窓の外に目を向けると、薄紫色を帯びた朝日に暖色で統一された屋根が浮かび上がる。 昼間の喧騒を忘れた街はそろそろ目覚める頃だろう。 エリース王国フェーメル。 山と湖に囲まれた街で迎えた、初日の朝の事だった。 [*前へ][次へ#] |