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小説3 (御曹子×トリマー)
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両手をあげて見せ、後ろへ下がる。
その姿は、たちまち人ごみに飲まれていった。

「那月…?」
しがみついてきたまま、細かくふるえている那月を見下ろした。

顔が真っ青だ。

「怖かったのか?」
那月がうん、と頷く。

「知らない人に、あんなふうに話しかけられたの、初めてだからびっくりして…」

「もう大丈夫だ」
「うん」

カタカタとふるえているこの様子では、食事は無理かもしれない。

あの男を呪い殺したくなる。

「帰ろうか?」
その言葉に、那月がびっくりしたように柊を見上げた。

「どうして?ごはん食べないの?」
「ここはもう嫌だろう?」

少し首をかしげて、那月が考える。

「そう…。ここはあんまり僕向きじゃないのかもしれないけど、でも、柊さんとならきっと楽しくなるよ。柊さんさえ嫌じゃなければ、ごはん食べよう?」

自然に柊の顔が綻ぶ。

「じゃあ、行こうか」

今度ははぐれないように、柊はしっかりと那月の肩を抱いて歩き出した。




「おいしいね!」
「そうか、それはよかった」

静かなレストランの中で、柊は那月を見て目を細めた。

那月の口から聞いたことはなかったが、那月が15歳までイギリスにいたらしいという事は、調べがついている。

ナイフとフォークを扱うことはできるだろうと、美味いフルコースを出してくれる店を選んだが、那月の反応は想像以上だった。

那月は日常、箸を使っているが、その箸で魚の骨を取るのは苦手だ。

だが、ナイフとフォークならば上手に魚の骨が外せるのだ。

にこにこと美味しそうに料理を口に運ぶ那月だが、時折ふっと考え込むような表情を見せる。

やはり、先ほどの男のことが尾を引いているのだろうか。

「ねえ、柊さん」
「ん?」

「僕ね、15歳まで、イギリスにいるお祖父さんに育てられたんだ」

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