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小説3 (御曹子×トリマー)
18
(住めば都とは、よく言ったものだな)

駅前に出て、那月のシャツや下着などを買い足し、ついでに新鮮なカキを仕入れる。

那月はホワイトソースを使った料理が好きだ。
ならば、カキのグラタンもきっと喜んでくれるだろう。

買い物をしながら、那月の事ばかり考えていることに、この時の柊は気付きもしなかった。


夕方、グラタンの焼ける匂いがキッチンに漂う頃。

パタン!
玄関の開閉の音。
続いて那月の足音。

だが、今日はいつものような弾んだ足音ではない。
柊が背中を向けたままでいると、すぐ後ろで足音が止まり、

「ただいま、柊さん」
と、声が聞こえた。

待っていても、那月の腕が回ってくることはない。

物足りなくて、寂しい。
それを飲み込んで、

「お帰り」
と背中を向けたまま言う。

「お風呂、入ってくるね」
声に元気がない。

那月の声はもともと吐息のような音だが、いつもはもっと弾んだ調子がついている。

「ああ、ゆっくり温まってこい」
「うん」

風呂からあがってきた那月は、昨夜と同じだ。

柊の手を避けて、うつむいたまま食事をする。
笑った顔もいいが、うつむいた顔もまたいい。

大きな瞳が伏せられて、長いまつげが頬に影を落としている。

じっと眺めていたら視線に気付いたのだろう。
那月が突然瞳を上げた。

大きな澄み切ったセピア色の瞳が、柊を見て、慌ててまた伏せられる。

「…おやすみなさい」
那月は夕食を済ませると早々に自室に引き上げてしまった。

いつもならまだ柊にまとわりついているか、リビングのソファで真っ暗な庭を眺めながら紅茶を飲んでいる時間だ。



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あきゅろす。
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