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小説3 (御曹子×トリマー)
16
びっくりした顔をしている那月のあごに手をかけ、小さな唇に自分の唇を押し当てた。

那月の体が一瞬ビクッとふるえたが、抵抗もせず腕の中でおとなしくしている。

一度唇を離して、那月の顔を眺めた。

潤んだような大きな瞳でまっすぐに柊を見上げている。

午前中から持ち越していた柊のイライラは、嘘のように消えていた。

もう一度、唇を合わせる。

今度は、舌を出して、那月の小さな唇と歯列を割る。
すぐに目的のものが見つかった。

絡め取り、そっと吸う。
「んっ…」
那月の膝がふるえはじめた。

唇を離してやると、くたっと体をあずけてくる。

少し落ち着くまで腕の中に入れておいて、やがて額に軽いキスをして離す。

「風呂に、入ってこい」
「うん」

那月がふらふらとバスルームへと消えた。

柊は、流しのへりに手をついて俯く。
(参った)
コップに冷たい水を入れて、額に押し当てる。

今のキスは、ダイレクトに腰にきた。
今まで、数えきれないくらいの男女と寝てきた。

キスだけで勃つなど、絶対になかったことだ。
しかも、何の経験もないような子ども相手に、だ。

正直な話、那月の体から腕を放せたことが奇跡に近い。

柊にストップをかけたのは、わずかに残った理性だ。
那月の気持ちをきちんと確かめて、ベッドの上で大切に抱きたい。
キッチンの床で、オモチャのように扱いたくない…。

「違う!そうじゃない…」
声に出して、たった今、自分が考えていたことを否定する。

抱くにしろ抱かないにしろ、これから罠にかける相手を、自分に惚れさせることは基本だ。
そのほうが、脅しをかけたときスムーズにこちらのいう事を聞いてくれる。

まだ、那月の心を完全に支配したわけではない以上、抱いても仕方がない。
疲れるだけだ。
だから、腕を放したのだ。
そう自分に言い聞かせる。

(もう十分楽しんだでしょう?俺があなたのような人を本気で相手にするとでも思っていたんですか?馬鹿らしい)

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