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小説3 (御曹子×トリマー)
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家にいるときの那月はどこかぼうっとしていて、ふわふわと地に足がついていないような顔をしているが、いまはピンと張りつめたものが、中性的なかわいい顔を引き締めている。

そういえば、家にいるときはシャツのボタンすら留めることを忘れ、柊が留めてやらなければ今にも脱げそうにだらしなく着ているのに、今、白衣のボタンはきちんと上まで留められている。

言葉づかいも、いつもの幼いものではなく、しっかりとしていた。

家での那月と、店での那月、どちらが本物の那月なのだろうと、ぼんやりと考えた。

「那月さん、仕上げ、お願いします」
龍之介が那月を呼んだ。

愛の仕上げたプードルの最終チェックをしていた那月がニコッと笑って、
「はい、今行きます」
と、手をあげて見せる。

どうやらここでの那月の主な仕事は、カットの最終チェックをすることのようだ。

「龍之介くんは、ミニチュアシュナウザーが苦手でしたね」

那月はそう言いながら龍之介がカットしたシュナウザーの周りをぐるりと一周する。

「うん、よくまとまっています」
「かわいらしくなりすぎてないですか?」

「この子はショーに出るわけじゃないんですから、かわいくていいんですよ」
那月は腰にぶら下げたシザーケースの中から鋏を取り出して、犬の後ろに回る。

「よく見て。シュナウザーの後ろ足は、全体的に台形に作ります。…これは、ショーに出る子も出ない子も、同じですよ」

そう言いながら、手早く櫛で犬の毛を起こし、鋏でカットしていく。

「そうして、この後ろ足の間から前を見たときに、真っ直ぐな前足が見えていたら、成功。…龍之介くん、腕をあげましたね」

「マジっすか!?」
龍之介が嬉しそうな顔をする。

「こら、そういう言葉は店で使ったらだめです」
那月がこつんと龍之介の額に指をあてる。

龍之介がちらりと柊を見た。
なんとなく柊を不愉快にさせる視線だ。

「龍之介くん、次のコンテストには出てくださいね」
「えええっ!いやですっ!俺は、那月さんと離れるの、いやだー!」

龍之介は那月を後ろから抱きしめて、柔らかい髪に頬ずりしながら、ちらりと得意そうに柊を見る。

柊はたまらなく不愉快になった。



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