小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結 7 毎日、新しい鏡が作られるたびに、鏡の中の道も増えることになるのだ。 気の遠くなるほど多い鏡と鏡の中の道。 そのなかから目的の道を見つけ出し、そこに出るには細心の注意が必要だ。 星を伴って鏡道を歩きながら、 〈そういえば、初めて鏡道を通った時には、のぞき見をしているようでドキドキしたものだが〉 主夜が、ふとほほ笑む。 多くの人間は鏡の中に道があるなどとは思ってもみないのだろう。 こちら側からは丸見えだというのに、時として性行為までも鏡に映すのだ。 おかげで、今ではたいていのことを見ても、平気でいられるようになった。 〈ああ、あそこだな〉 桃子が気を利かせて、鏡のふちに美しい桃の花を飾ってくれたようだ。 「せい〜っ!あいたかったよ〜っ!」 鏡から抜け出たとたんに能天気な声がして、主夜はぐいっと押しのけられた。 「わっ…わあっ!黎(れい)さまっ!このような場所でおやめくださいっ!2日前にお会いしたばかりではっ!?」 いつも冷静な星が慌てふためき、キスしようと寄せてきた黎の顔を押しのけようとしている。 主夜の顔が引きつった。 「黎、やめろ。少なくとも俺の目の前では、許さん」 黎は主夜の言葉をまったく無視して星を抱きしめ、押さえ込んでキスの雨を降らせている。 主夜はため息をついて、二人から目をそらした。 黎は主夜の母親の里である、月山の跡取り息子だ。 月山も戸隠と同じ貴族なので、幼稚舎では一緒だった。 背丈は主夜と同じくらいだが、髪を見事な金髪に染め、穴のあいたジーンズにタンクトップ、ピアスにネックレス、能天気なおちゃらけた態度は、とても主夜と血のつながったいとこ同士には見えない。 キスの雨を降らせ終わった黎は、星を抱きしめたまま主夜に目を向けた。 「主夜、そろそろ星をボクにちょうだいよ」 「星は物じゃない。はいそうですかと、お前などに渡せるわけがないだろう」 「じゃあ、せめて夜だけでも僕のところに帰ってくるようにしてよ」 「星には好きにしていいと伝えてある。夜にお前のところに行かないのは、何か理由があるからだろう」 「それはそうよ。夜に黎のところなんか行ったら、次の日立てなくなっちゃうわ。それじゃ困るわよねえ、星」 [*前へ][次へ#] [戻る] |