小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
5
「お久しぶりね、主夜。幼稚舎の同窓会以来でしょうか」
「そうだな」
幼稚舎は、500年前に神王と鬼王の合議によって作られた臨時の施設だ。
身分の高い神族と鬼族の子どもたちは、生まれてすぐから100年間、幼稚舎で寝食を共にして育った。
500年前の妖との戦いで、珠と玉は眠りについてしまった。
これにより、神界 鬼界は二つの種族の結びつき、礎となる物を失ってしまったことになる。
天界は地界の助けがなければ成り立たない。
地界は天界の助けがなければ滅びる。
珠と玉がいつ目覚め、宿り手がいつ生まれてくるか解らない以上、神界と鬼界は自らの手で、二つの種族の結びつきとなるものを作り出す必要があった。
幸いな事に二つの種族は、寿命が長い(2000年余)ことも、出生率が低いことも、社会構成(王の下に2家の貴族、そのしたに6家の分家、9家の影、さらにその下に使役達)までもが似通っていた。
そこで神王と鬼王は、二つの種族が兄弟のように助け合えるようにと、王の子どもと2家の貴族の子、そしてその子供たちに付き従うことがきまっている、影の身分の子どもたちを、幼稚舎に集め一緒に育てることにしたのである。
主夜を含めた鬼族6名と神族6名は、今も兄弟のような絆で結ばれている。
「実は、困ったことが起きてしまいました」
「桃子が困るとは、珍しいな」
「ええ、わたくしもそう思います。そのことで、主夜に相談とお願い事がございますの。どうか、今すぐこちらに来ていただけないでしょうか」
主夜の目が訝しげに細くなった。
桃子は、頼みごとをする相手に出かけて来いというような礼儀知らずではないはずだ。
「本来ならば、わたくしがそちらに伺ってお話をするのが礼儀だとは思うのですが、今、わけあって白神山の小さな滝に封じられ、身動きが取れずにいますの」
「封じとはまた…。いったい何をやらかした?そもそも。封じられているのになぜ水鏡を使う。ばれたら罪が重くなるぞ」
封じとは、法律や掟を破った神族や鬼族が、数年から100年の間、一か所に閉じ込められることだ。
当然、封じの期間中には外界との連絡は一切できない。
たった一人で、話し相手もなしに封じの期間を過ごすのだ。
「今回は特別ですの。お父様の許可もいただいておりますから、大丈夫ですわ。わたくしのお願いは、今回の封じの罪とも関係しています。いらしていただけるかしら?」
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