小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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麻の指がパチンと鳴って、手の中に白いレースの小さな服が現れた。
「ね?麻が着せて差し上げますから、ここへいらっしゃいまし」
主夜が驚いたことに、ぷーはソファの上に跳び移り、麻にレースのワンピースを着せてもらっている。
「麻、頼みがある。俺は今、ぷーと約束したんだが…」
「はいはい、解っておりますよ。ぷーさんのお食事ですね。お二人の間を邪魔しないようにとでもおっしゃったんでしょう。…はい、できました」
麻がぷーを紫陽の頭の上に戻しながら、まるで見ていたようなことを言った。
主夜はドキッとする。
麻には、紫陽に対する自分の気持ちを話したことなどないのに、何もかもわかっているようなことを言う。
紫陽も、俺の気持ちに気付いているだろうか。
だったら話が早いのだが…。
紫陽を見ると、きょとんとして首を傾げている。
…何もわかっていないのだ。
主夜は少しがっかりしてしまった。
〈憎たらしいウサギだ…〉
4時半のティータイム。
主夜はじろっとぷーを見下ろした。
ぷーは主夜を無視して、麻が出してくれたケーキを黙々と食べている。
呆れたことに、ぷーは皆の前と主夜の前ではまるきり態度が違う。
黎や星、麻の前では行儀よく、かわいらしく小首を傾げて両前足で指をつかんだり、膝の上に乗って食べ物をねだったりしている。
紫陽の前では自己主張はするが、それでも随分手加減している。
だが、ひとたび主夜と2者だけになると、主夜の問いかけにはそっぽを向き、気に入らなければ噛みつこうとさえする。
主夜が紫陽を抱きしめようとすれば、わざとらしく部屋の中を縦横無尽に飛び回り、花瓶を倒したり、本を棚から落としたりするのだ。
主夜の機嫌は悪くなるばかりで、紫陽はどうしてよいのか解らずに、おどおどと主夜とぷーを見比べるばかりだ。
「紫陽、本当に向こうに帰るのか?」
時計が5時半を告げ、立ち上がった紫陽に、主夜が残念そうに聞く。
ぷーの食事のこともあるから、泊まっていけという主夜に、紫陽は例によって首を横に振ったのだ。
「はい」
「そうか…」
紫陽が麻から大きな包みを受け取った。
中身はぷーの食糧だ。
「送っていこう」
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