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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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すくなくとも、主夜の手元なら、冷たい仕打ちをする者から紫陽を守れる。

だが、紫陽はどんなに勧めても首を縦に振らない。

今もそうだ。
引き留めておこうとして、紫陽にとって居心地がいい環境を作り出し、優しく抱きしめた。

だが紫陽はそっと体を離し、寂しそうに笑って帰っていくのだ。

この1ヵ月、ずっとそんなことが続いている。

もう、主夜の我慢も限界だ。
鬼王や神王に怒られるのを承知で、いっそこのまま紫陽をさらって山の中の洞窟にでも二人で籠ってしまおうか。

二人きりで暮らせば、紫陽には主夜しか頼る者がいなくなる。

〈俺だけを見て、俺の事だけ考えて過ごせばいい〉

居間のカーテンの陰にある椅子に腰かけて、ぼんやりと外を眺める。

紫陽が住んでいる小屋の屋根が、林の木の上にわずかに出ているのが見える。

紫陽は今、あそこで何をしているのだろうか。

考えていたら、紫陽が林を抜けてくるのが見えた。
本を大事そうに抱えている。

こちらに向かっているのだろうか。
主夜の鼓動が早くなる。

紫陽は立ち止まり、誰かを待っているようだ。

少したって紫陽に近付いたのは、陰陽の頭、信也の息子、俊也だ。
こちらも本を持っている。

二人は何事かを話し、俊也が紫陽に本を渡す。
紫陽も自分が持ってきた本を俊也に渡した。

紫陽がにっこり笑って俊也を見上げる。
俊也の手が紫陽の髪を撫でる。

主夜がぎりっと奥歯をかみしめた。

胸が痛い。
なぜ、俺以外の者にも、あんなふうに無邪気に笑いかけるのか。
髪を撫でられて嬉しそうな顔をするのか。

第一、本ならば書庫に腐るほどあると言うのに、なぜ俊也と本の交換をしなければならないのか。

そもそも、紫陽は俺のことをどう思っているのだろう。

好きかと問えば、ためらいなく好きと返ってくる。
キスも拒みはしない。

だが、紫陽は幼い。

もしかしたら、紫陽が主夜に向かって言う“すき”は、麻や森の動物たちに向けるのと同じ種類の“すき”かもしれない。

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