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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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「わあ…!ありがとうございます…!」

紫陽の笑顔は、主夜の心を明るくする。

紫陽が選んだのはアクション映画だ。
これなら、恋愛ものを見るより退屈しないで済みそうだった。

前の買いが終わるまで5分ほど時間があったので、映画館のホールのベンチに二人並んで腰を降ろす。

紫陽がにこにこして主夜の買い与えた映画のパンフレットをめくっている姿が、とてもかわいい。

小さな木の実で楽しそうに遊んでいる、リスの仔のようだ。

「紫陽、ポップコーンを買ってやろうか?」
「はいっ」
「よし、ここでちょっと待っていろ」

紫陽の髪を撫でてから、売店へと行く。
誰かのために何かを買うという行為が楽しいなど、一度も思ったことがなかったが、今は紫陽のために店中のポップコーンを買い占めたい気分だ。

ポップコーンとジンジャーエールを買って、紫陽のほうを見た主夜の顔が険しくなった。

一人の男が、何事かしきりに紫陽に話しかけている。
どす黒く不愉快なものが、主夜の胸にこみ上げてきた。

「俺の連れに何か用か」
男の後ろから声をかけた。
自分でもびっくりするくらいの不機嫌な声だ。

「あ…、お…、鬼…?」
主夜がよほど怖かったのだろう。
男は何も言わず、逃げるようにその場を離れて行った。

紫陽が主夜の手からポップコーンとジンジャーエールを受け取りながら、明らかに安心した顔をする。

それを見て、主夜の中のどす黒く不愉快な感情が、嘘のように消えた。

「どうした、何か嫌な事でも言われたか?」

そう聞いた声は、もういつもの落ち着いたトーンだ。

「いえ。…ぼく、女の子に間違われたみたいで、少しショックを受けました」

「ああ、そうか」
確かに紫陽は色が白くて、肌のきめが細かい。

大きな瞳は長いまつげが縁取っているし、小さな唇は何もつけなくても、いつもバラ色でふっくらとしている。

「紫陽はかわいいからな。そういうこともあるかもしれない」

「うー…」

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