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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
18
清酒に溶かされた塩が地面に吸い込まれてゆくのを確認しながら、主夜の唇は高く低く口笛の旋律を奏でる。

やがて、地面に染みた清酒と塩の線から、金色の光が立ち昇る。

光が背丈を超える高さまでになると、主夜は光の外に出て、何かを握りこむように両手を合わせた。

次にそっと手を離し、両手の平にフッと息を吹きかける。

白い光のボールが八つ、主夜の手のひらから飛び出して、光のカーテンに次々と吸い込まれた。

ドンッ!!!

地響きとともに、いきなり主夜の家が目の前に出現した。

パチパチパチと、黎の拍手。
「すごーい!相変わらず、お見事」
「…帰りはお前がやれ」

「はいはいっと。せいーっ、いるーっ?」
黎はさっさとドアを開けて家の中に入ってしまった。

「わあっ!れっ、黎さまっ!どうしてここにっ?やめてっ!おやめくださいっ」

ドアが開け放しになっていた居間から、星の慌てた声が聞こえた。

見なくても、そこで何が行われているか想像がつく。
主夜の顔が渋くなった。

「きゃあぁっ!主夜さまっ!何事ですかこれはっ!」
台所から聞こえたのは麻の声だ。

〈しまった。まだ母上のところへ戻っていなかったのか〉
主夜は首をすくめる。

あの叫び声の様子では、麻はかなり怒っているはずだ。



夕方。
黎と主夜は書庫のソファに仲良くぐったりと体を預けていた。

「まいった〜。麻があんなに怒るなんて」
「うむ。さすがに堪えたな」

麻の小言は、ピアノの高音で休みなくがんがんと不協和音を鳴らしているようなものだ。

弁解しようにも、言葉をさしはさむ余地などまるでない。

「そもそも家を移すならなぜ麻に奥さまのところへ帰れなどとおっしゃったのでございます麻がいなくてどうやってお掃除やら洗濯やら食事の用意やらをなさるおつもりですか主夜さまがお生まれになって500年誠心誠意お仕えしてまいりましたこの麻の何が気に入らなくて奥さまのもとへ帰れなどとおっしゃるのです!」

…黎も主夜も、喉まで出てきている言い訳を言葉にすることもできずに、ただじっと嵐が過ぎ去るのを待っていた。

星がくすくすと笑いながら、冷たいハーブティを持って現れる。

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