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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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神界の“生誕の祝い”とは、生まれてきた赤子に珠を握らせる儀式だ。

もしもその赤子が宿り手ならば、珠はその子の体の中に吸い込まれる。

鬼界では、“誕生の儀”と呼ばれ、赤子に玉を握らせる。

これは珠と玉の宿り手の命が尽きた後、次の宿り手を探すためにずっと行われてきたことだ。

宿り手がいないときは神界でも鬼界でも、身分の上下を問わず、生まれてから七日以内に王の下でこの儀式をすることが義務付けられている。

「“生誕の祝い”をしたのか?」

「主夜の言いたいことはよくわかりますわ。紫陽は半分人間で、神ではない。その子にどうして儀式をしたのか、と言いたいのでしょう?」

「そのとおりだ」

「わたくしが封じられた後、たった一人になる子供が、神族として暮らしていけるように。紫陽は半分は人間かもしれませんが、紛れもないわたくしの子です。儀式をすることで、紫陽は神族であると周囲に知らしめたかったのです。…まさか、紫陽が宿り手になるなんて、思ってもみませんでした」

紫陽の、“生誕の祝い”における記録は抹消された。

「神族の人間嫌いは、並大抵のものではありません。半分人間の紫陽が珠の宿り手だと知られれば、一部の過激な者たちが、紫陽の命を狙います」

紫陽の命がつきれば、珠はまた新たな宿り手を探すからだ。

生まれたばかりの紫陽を守るため、神王は鬼王を通じ、18歳までという約束で陰陽寮に紫陽を預けた。

「陰陽寮には、鬼と人間の間に出来た子が沢山います。紫陽も受け入れてもらえるでしょうし、何より陰陽寮は完全に鬼界の領域なので、神族が手を出せないからです」

珠が目覚めたのだ、玉も時間を置かずに目覚めるはずだ。

鬼界で玉の宿り手が出てしまえば、紫陽が珠の宿り手だと公表できる。

玉と珠の宿り手は、同じ時に命が尽きるので、鬼界の手前、どんなに過激な神族でも紫陽を殺すわけにはいかなくなるからだ。

「…紫陽はもう17歳と半年になります。それなのに玉は目覚めず、玉の宿り手は出てきません。18歳になれば陰陽寮を出なければなりませんが、紫陽は自分の身を守る術さえ使うことができないのです」

「陰陽の連中はこの子に術を教えないのか」

「それどころか、紫陽と目を合わせて話をして下さるのは、陰陽の頭のご子息だけです」

紫陽は成長するにつれて、珠の力を発揮しはじめた。

怪我や病気を己の体に引き受けて、他者を癒すのだ。

人を守り、下妖と戦って怪我をすることの多い陰陽の人間たちには、それは大いなる力のはずだった。

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